ラーンがいつものように大げさな声で遺跡探検の話をしていた。「今回は絶対、何か大物が見つかる気がするんだ!この遺跡には古代王の墓があるって噂だしな!」
イシェはため息をつきながら、剣を磨いていた。「またそんな話? 以前も『古代の宝箱』なんて言ってたよね。結局、錆びた鍋しかなかったじゃないか。」
「違う違う、今回は本物だ!ほら、テルヘルさんもそう言ってくれただろう?」ラーンはテルヘルの方を見つめたが、彼女は冷ややかな目で地図を広げ、遺跡の出入り口を指さしていた。「この崩れかけた通路から入ると、中央の祭壇に直接たどり着けるはずだ。ただし、罠がある可能性もある。慎重に進もう。」
「罠か…また厄介な話だな…」イシェは呟きながら、地図を確かめた。「でも、テルヘルさん、なぜこんな危険な遺跡を探る必要があるのですか? ヴォルダンとの復讐には、遺跡の遺物が必要なのでしょうか?」
テルヘルは一瞬だけ視線を逸らし、ゆっくりと答えた。「私の復讐は、単なる個人的な恨みではない。ヴォルダンが築き上げたこの世界の秩序を覆すことが目的だ。そして、そのために必要な情報は、この遺跡に眠っている。」
ラーンの表情が曇り始めた。「つまり、僕たちを巻き込んだのは…?」
「君たちの力を必要としているだけだ。」テルヘルは冷たい目でラーンを見つめ、「お前たちは、私の計画の一部に過ぎない。」と告げた。その言葉に、ラーンの胸には不吉な予感が広がっていった。
遺跡の奥深くへと続く通路を進むにつれて、イシェの不安も大きくなっていった。テルヘルの目的は何か?そして、この遺跡に眠る真実は一体何なのか…? イシェは自分の直感を信じ、ラーンの無邪気さに巻き込まれずに、真実を見つけ出す決意を固めた。