ラーンが石を蹴飛ばすと、それは遠くまで飛んでいった。イシェの眉間にしわが寄った。「無駄だ。」と静かに言った。「そんなことをする暇があるなら、明日の探索について考えろ。」
ラーンの肩を軽く叩いたテルヘルは、鋭い目で彼らを見据えた。「準備は万端か?」その声は冷たかったが、どこか落ち着きを感じさせた。「ヴォルダンとの戦いは避けられない。そして、そのために我々は力をつけなければならない。」
ラーンはイシェの視線を避けながら、「ああ、わかってるよ」と答えた。だが、彼の目はどこか遠くを見つめていた。
ビレーの街並みを眺めると、まるで巨大な振り子のように揺れ動き始めるような気がした。かつては穏やかな生活を送っていた人々も、ヴォルダンの影に怯え、希望を失いつつある。その不安定さは、彼自身にも重くのしかかってくるように感じた。
イシェが地図を広げ、遺跡の位置を示す指を動かした。「あの遺跡には、ヴォルダンが探し求めるものがあるらしい。」彼女の冷静な声は、ラーンの心を少しだけ落ち着かせた。「我々がそれを手に入れることができれば…」
「ああ、そうだな。それでヴォルダンを倒せるんだろ?」ラーンの目は再び輝きを取り戻した。「そうすれば、ビレーも…そして、俺たちも自由になれる!」
テルヘルは二人のやり取りを静かに見ていた。彼女の心には、復讐の炎が燃え盛っていた。だが、その奥底では、もう一つの希望が揺らめいていることを誰も知らない。それは、この振り子のように揺れ動く世界に、再び安定をもたらすための願いだった。
「さあ、出発だ。」テルヘルは立ち上がった。「未来は我々が切り開く。」