「よし、今日はあの古代都市跡に挑戦だ!」
ラーンの豪快な声に、イシェはため息をついた。「また大穴を夢見てるのか。地図すら確認しないなんて、相変わらずだな」。
「大丈夫、大丈夫!俺の直感は間違いないんだ!今回は絶対に何か見つかる」ラーンは胸を張った。イシェは彼の熱意に苦笑するしかなく、テルヘルに視線を向けた。「どう思う?」
テルヘルは鋭い目を遺跡の地図に落としながら、「情報によると、この古代都市跡には強力な魔具が眠っている可能性がある。だが、同時に危険な罠も仕掛けられているという話だ」と冷静に言った。
「罠か…。まぁ、俺が切り開けばいいだけのことだ!」ラーンは意気揚々と剣を構えた。
イシェはテルヘルの顔色を伺うように言った。「あの…テルヘルさん。遺跡探検には危険が伴います。もし何かあったら…」
「心配するな。私は自分を守る手段を持っている」テルヘルは淡々と答えたが、その瞳に僅かな影が浮かんだ。イシェは彼女の過去を知っているため、その言葉の裏にある複雑な感情を察した。
ビレーの街を出発し、数日かけて遺跡へとたどり着いた一行。遺跡はかつて栄華を極めた都市だった名残があり、崩れかけた石造りの建物や彫像が静かに時間を刻んでいた。
「ここだ!古代都市跡の入り口だ!」ラーンが興奮気味に叫んだ。イシェは地図を広げながら確認すると、「確かにここは古代都市跡の入り口のようだが…何か変だ」と眉をひそめた。
「何が変だと?」
「この場所には、本来であれば警備隊が配置されているはずなのに…」
その時、背後から冷たい声が響いた。「挨拶もなしに遺跡に踏み込むとは、生意気な連中だな」。振り返ると、ヴォルダンの軍服をまとった兵士たちが彼らを包囲していた。
ラーンは剣を抜き、「おい!何のつもりだ!」と怒りを露わにした。テルヘルは冷静さを保ちながら、「なぜここにいるのか、その理由を聞きたい」と問いかけた。
兵士の一人が嘲笑するような声で答えた。「この遺跡はヴォルダンの領土だ。お前たちは、無断で侵入した罪で捕らわれの身となる」。
ラーンの顔に怒りが燃え盛る。「そんな…!」。イシェはラーンを制止しようと手を伸ばすも、テルヘルが先に動き出した。
彼女はゆっくりと剣を抜くと、兵士たちに言った。「我々は単なる遺跡探検家だ。ヴォルダンとの紛争には関与しない」。その言葉は、まるで呪文のようだった。兵士たちは一瞬、戸惑った表情を見せた。