「よし、ここだ！」ラーンが興奮気味に叫んだ。崩れた石柱の隙間から、薄暗い空間が見えた。イシェは眉間に皺を寄せた。「ラーン、落ち着いて。あの奥行き…もしかして罠じゃないのか？」
「大丈夫、大丈夫！俺が先頭切ってやる！」ラーンは剣を構え、迷わず崩れかけた通路へ足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら後ろから続く。テルヘルは冷静に周囲を観察しながら、二人が進む様子を見守っていた。
「あの遺跡の記録には…確かにこの場所に関する記述があった」テルヘルが呟いた。「古代の音楽装置だと…？」
イシェが振り返った。「音楽装置？そんなもの、本当に存在するのかしら…」
「もし本当なら…価値ある遺物になる可能性が高い」テルヘルは目を細めた。「そして、ヴォルダンに渡すには最高の切り札になるだろう…」
深く潜っていくにつれ、空気が重くなり、不気味な静けさに包まれた。壁には奇妙な模様が刻まれており、かすかに光る文字が浮かび上がっていた。ラーンは興奮気味にその文字を指さした。「何か書いてあるぞ！古代語かな？イシェ、わかるか？」
イシェは慎重に壁の文字をなぞりながら言った。「…わからない。複雑で、見たことのない記号ばかり…」
その時、通路の奥から不協和音のような音が響き渡った。まるで、何者かが奏でる歪んだ音楽のようだった。ラーンの表情が硬くなった。「なんだあの音…？不気味だ…」
イシェは緊張した様子で言った。「何かがおかしい…早く戻ろう！」
しかし、その時、通路の壁から突如光が放たれ、三人は blinding light に包まれた。そして、意識を失った。
目が覚めた時、三人は広大なホールに立っていた。天井が高く、壁一面には複雑な模様が描かれており、中央には巨大な装置が鎮座していた。装置からは今も不協和音が奏でられていて、その音はまるで、何かを呼び覚ますように聞こえた。
「ここは…一体どこだ？」ラーンは戸惑いながら言った。イシェも同様に言葉を失っていた。
テルヘルだけが冷静に状況を分析していた。「これは…古代文明の音楽装置だ。そして、あの音…それは制御されていないエネルギーを解放しているようだ」
その時、装置からさらに強烈な光が放たれ、ホール全体が震え始めた。ラーンは恐怖で声を上げた。「逃げろ！ここは早く出るぞ！」
しかし、出口は既に閉ざされていた。三人は絶望的な表情で、制御不能になった装置を見つめるしかなかった。
その時、テルヘルの瞳に光が宿った。「…わかった。この装置の力を利用すれば、ヴォルダンを滅ぼすことができるかもしれない…」
彼女は深く息を吸い込み、力強く言った。「ラーン、イシェ！俺たちはこの装置を操るのだ！」
三人は互いに顔を見合わせ、それぞれが抱きしめている夢と希望、そして恐怖を共有した。彼らは、この危機を乗り越えるために、力を合わせることを決意した。
しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、未知なる古代文明の秘密、そして、その背後に潜む、巨大な陰謀だった。