ラーンの豪快な笑いがビレーの朝の静けさを打ち破った。「今日はきっと大物が見つかるぞ!イシェ、準備はいいか?」
イシェはため息をつきながら、道具を確認した。「いつも大物だなんて言うけど、結局は錆びた剣と割れた壺ばかりじゃないか」
「でも、いつか必ず大穴を見つける日が来る!」ラーンは目を輝かせ、大きな荷物を背負い始めた。
テルヘルが冷酷な笑みを浮かべて言った。「大穴?面白い冗談だ。私はそんなものに興味はない。重要なのは、ヴォルダンへの復讐を果たすための情報だ」
彼女の手には、ヴォルダン軍のシンボルがあしらわれた古びた地図が広げられていた。それは、かつてテルヘルの故郷を焼き尽くした戦いの記録だった。
ビレーから離れた遺跡へと向かう道中、ラーンの無謀な行動がイシェを困らせる。落とし穴にはまりかけたり、毒のある植物に触れたり、いつもイシェは冷静に状況を判断し、彼を助けることで難を逃れていた。
「本当に、お前は何も考えてないのか?」イシェは眉間にシワを寄せる。「テルヘルが言うように、遺跡探検は危険だ。もっと慎重に…」
ラーンの顔には、イシェの言葉を受け止めようとする意思はなく、ただ無邪気に笑っていた。「大丈夫だ!俺たちにはイシェがいるんだろ?お前ならどんな危機も乗り越えられるって信じてる!」
イシェは彼を睨みつけながらも、どこか安心感を感じていた。ラーンの行動は危険だが、彼の純粋な心と仲間への信頼は揺るぎないものだった。
遺跡内部深くへと進むにつれ、周囲の気温が下がり、不気味な静寂が広がった。壁には古代文明の文字が刻まれ、その意味を解読するテルヘルの姿があった。彼女は地図と照らし合わせながら、遺跡の構造とヴォルダンとの関連性を分析していた。
「ここには何かあるはずだ…」テルヘルは呟いた。「この遺跡はヴォルダンの過去に深く関与している。そして、私の復讐の鍵となる情報が隠されているはずだ」
ラーンは興奮気味に言った。「よし!じゃあ早速探検を始めよう!」
イシェは冷静に言った。「待て、ラーン。テルヘルの言う通り、ここは危険だ。まずは周囲をしっかり確認し、罠がないか確かめる必要がある」
「イシェが言う通りだ」テルヘルも同意した。「我々は協力して進まなければ、この遺跡から生還できないだろう」
三人は互いに尊重しながら、慎重に遺跡の奥へと進んでいった。
そして、ついに彼らは古代の祭壇を発見する。その中心には、輝く宝石が埋め込まれた黄金の石板があった。
「これは…!」テルヘルは息を呑んだ。「ヴォルダン軍の秘密兵器に関する情報が刻まれている!これを手に入れることができれば…」
ラーンは興奮気味に石板に触ろうとしたが、イシェは彼を制止した。「待て!何か罠があるかもしれない」
その瞬間、石板の表面から鋭い光が放たれ、ラーンを襲った。彼は悲鳴を上げながら後ずさりし、壁に激突した。
「ラーン!」イシェとテルヘルは同時に駆け寄る。だが、ラーンの体には奇妙な模様が現れ、徐々に体が硬直していく様子だった。
「これは…!」テルヘルは顔色が変わった。「古代の呪いだ!石板に触れた者は呪われ、永遠に石の牢獄に囚われる運命となる…」
イシェはラーンを助けようと必死だが、彼の体は動かず、意識を失ってしまった。
「何てことだ…」イシェは絶望的な表情で言った。「ラーンが…」
テルヘルは冷静さを保ち、石板の呪文を解く方法を探すため、遺跡内の壁画や文字を分析し始めた。
「必ずラーンの呪いを解いてやる。どんな犠牲を払っても…」
彼女の瞳には、復讐への執念と、仲間への強い決意が燃えていた。