ラーンが巨大な石の扉を押し開けた時、埃が舞い上がり、薄暗い通路に充満した。イシェは鼻をつまんで咳き込みながら、「またも大したものはなかったね」と呟いた。ラーンの顔は期待に満ちていたが、イシェの言葉に肩を落とす。「でも、今回は違う気がするんだ。この遺跡、何かが違うって感じるんだよ」
テルヘルが背後から近づき、「そんな感触は無視すべきだ。時間がない。目的の遺物を見つけなければ意味がない」と冷静に言った。彼女の目は鋭く、遺跡の奥深くに沈んでいく影のように暗かった。
「そうだな、イシェ。今回は違うぞ！俺たちの大穴が見つかる予感がするんだ！」ラーンは熱意を込めて言ったが、イシェは彼の言葉を半信半疑で聞いていた。彼らは数々の遺跡を探検してきたが、未だに大成功を収めることはなかった。
通路を進んでいくと、壁には奇妙な模様が刻まれていた。イシェは指先でそっと触れてみる。「これは...何か呪文のようなものかもしれない」と呟いた。ラーンの顔色が一変した。「呪文って...まさか、ここで何か危険なものがあるのか？」
テルヘルは冷静に言った。「心配する必要はない。そのようなものがあれば、事前に調査済みだ」だが、彼女の瞳にはわずかな不安の色が宿っていた。
彼らはさらに奥へと進み、広間のような場所にたどり着いた。中央には巨大な石棺が置かれており、その周りを奇妙な光が包んでいた。イシェは息を呑んだ。「これは...！」ラーンも言葉を失った。
その時、石棺から突然、黒い煙が立ち上り始めた。煙は天井にまで達し、広がりながら部屋全体を覆い尽くした。視界が悪くなり、苦しい空気が喉を締め付けるようだった。
「何だこれは...！」ラーンが叫んだが、彼の声もすぐに煙に飲み込まれてしまった。イシェは咳き込みながら、テルヘルを探そうとしたが、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。
煙が濃くなり、意識が朦朧としていく中、イシェはかすかに聞こえる声を聞いた。「拡散...全てを...」
そして、闇に飲み込まれてしまった。