ビレーの酒場「荒くれ者」の賑やかな喧騒の中、ラーンはイシェに顔をしかめて言った。「またあの婆さんか？ 今回は何の遺物探しだ？」 イシェは溜息をつきながらメニューを眺めた。「噂ではヴォルダンとの国境近くにある遺跡らしい。危険だって言ってるし、報酬も安い。」「安いって言うな！ 今回は俺が交渉したんだぞ！ 婆さんは渋い顔してたんだけど、結局倍の値段で決めた！」ラーンは胸を張った。イシェは苦笑いを浮かべながら言った。「あの婆さん、いつもより高い金額を提示したからには、何か裏がある気がするよ。」
翌朝、三人はビレーを出発した。テルヘルが用意した馬車に乗り込み、ヴォルダンとの国境に近い山岳地帯へと向かう。道中、ラーンはテルヘルの目的について尋ねた。「あの婆さん、一体何の遺物を探しているんだ？」 テルヘルは少し考えてから答えた。「それは秘密よ。でも、君たちには関係ない。」 ラーンの顔色が曇る。イシェはラーンの肩を叩き、「気にすんな。報酬さえもらえればそれでいいだろ」と声をかけた。
遺跡の入り口には巨大な石造りの門が聳え立っていた。門の周囲にはヴォルダンの兵士たちが警戒に当たっているのが見えた。「あの婆さんは、一体どうするつもりなんだ？」 イシェは不安そうに言った。ラーンは「大丈夫だ。あの婆さんには何か計画があるはずだ」と強がって答えた。テルヘルは少しだけ微笑んだ。「計画？ 私は単なる招待状を届けるだけよ。」
遺跡内部に踏み入れると、そこは広大な地下空間が広がっていた。壁には古代の文字が刻まれており、床には様々なトラップが仕掛けられていた。ラーンとイシェは緊張した面持ちで遺跡を探検する。テルヘルは先導し、時折不気味な笑みを浮かべながら、壁に書かれた文字を指さす。「この遺跡は、かつてヴォルダンに滅ぼされた王国のものである。そして、ここに眠る遺物は、ヴォルダンを滅ぼす力を持つ鍵となる。」 ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。テルヘルの目的がようやく明らかになった瞬間だった。