ラーンが巨大な石門を蹴り飛ばし、埃っぽい空気を吸い込んだ。イシェが後ろから「ちょっと待て！」と叫んだが、ラーンの耳には届かなかった。いつも通りだった。興奮したラーンは、遺跡の入り口で慎重になるイシェに呆れ顔を見せることも多い。
「よし、今回は大穴だ！」
ラーンはそう言いながら、石畳の上を駆け出した。イシェはため息をつきながら、彼の後を続けた。テルヘルは二人がやり取りをしている間、遺跡の壁に刻まれた古代文字をじっと見つめていた。彼女は何かを感じ取っているようだった。
「ここには何かある」
テルヘルが呟いた。ラーンとイシェは振り返り、彼女の方を見た。
「何があるって？」
ラーンの問いかけに、テルヘルは少しだけ口角を上げて答えた。
「まだ分からないけど、何かがここに眠っている。そして、それは我々にとって必要なものだ」
すると突然、床から不気味な音が響き渡った。石畳が割れ、そこから黒い煙が立ち上ってきた。ラーンとイシェは驚いて後ずさりした。テルヘルは冷静さを保ち、剣を抜いた。
「これは...」
テルヘルは眉間に皺を寄せながら、煙の中に視線を向けた。煙が晴れると、そこには巨大な石の棺が姿を現していた。棺の上には、奇妙な模様が刻まれており、不気味な光を放っていた。
ラーンの心臓は高鳴り、イシェは緊張で息を呑んだ。テルヘルは静かに棺に近づき、手を伸ばした。
その瞬間、棺から黒い影が飛び出した。それは巨大な獣のような姿で、鋭い牙と爪を持ち、赤い目を輝かせていた。ラーンとイシェは驚きのあまり言葉を失った。テルヘルは冷静に剣を構え、獣に立ち向かった。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣とイシェの弓矢が獣に襲いかかるが、獣の体は頑丈で、攻撃をほとんど受け付けなかった。テルヘルは剣技で獣の動きを封じ込めるものの、その力は圧倒的だった。
その時、ラーンは思いついた。彼は石畳に飛び乗った後、巨大な石門に向かって走り出した。イシェが驚いて彼の名前を呼んだが、ラーンは振り返らずに走り続けた。そして、石門に激突した。
石門は揺れ動いた後、崩れ落ちた。すると、遺跡の奥から強い光が差し込んだ。獣は光に怯んで目を細めた。その隙にテルヘルが獣の心臓に剣を突き刺した。獣は悲鳴を上げながら消滅した。
ラーンは息を切らし、イシェとテルヘルと一緒に崩れ落ちた石門の下に集まった。三人は互いに顔を見合わせた。
「これで...終わりか？」
イシェが呟いた。ラーンの胸には、達成感と安堵感が渦巻いていた。そして、同時に、また別の冒険が始まる予感がしていた。