ラーンが石を蹴飛ばすと、それは小石を巻き上げながら荒れ地を転がり、やがて視界から消えた。太陽は容赦なく照りつける空高く、ビレーの街を見下ろす岩山には影さえも届かないほどだった。
「本当にここなのか?」イシェが眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「遺跡を示す印はハッキリしているんだけど…」
ラーンは肩をすくめた。「そんなことより、腹が減ったぞ。昼飯は何にする? イシェ、お前はいつもと同じ野菜スープか?」
イシェはため息をつきながら地図をしまう。「そうね。でも今回は少し贅沢にパンも買おうかしら。」
その時、背後から鋭い声が響いた。「見つかったぞ!」
ラーンの心臓が激しく跳ねた。それはテルヘルだ。彼女の目は興奮で輝き、手には古い巻物と錆びたナイフを握っている。
「遺跡の入り口だと? さすがテルヘルさん、情報収集は早いですね」ラーンは思わず拍手喝采した。
だがイシェは冷静だった。「でも、なぜこんな場所に?」
テルヘルは地図を広げ、指で場所を示した。「ここは古い文献に記された秘境だ。遺跡の奥深くにあると伝えられる『脈動の石』があるはずだ」
「脈動の石…」イシェは言葉を失った。その名前は、かつてこの地に伝わる伝説の一つだった。
「その石に触れる者には、あらゆる願いが叶うと言われている」テルヘルは目を輝かせた。「我々はそれを手に入れるのだ!」
ラーンの心臓は今にも飛び出しそうになるのを抑えきれない。イシェも、普段は冷静な彼女でも、わずかに興奮の色を帯びていた。
「では、準備だ! 伝説の遺跡へ!」
ラーンは剣を手に取り、興奮を抑えきれずに叫んだ。彼の胸の奥深くで、何かが激しく脈打っていた。それは期待、冒険への憧憬、そして、何よりも彼を駆り立てる、莫大な財宝への渇望だった。