ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の隣に座り、小さなコップを傾けていた。
「おいおい、イシェ、もっと楽しめよ!」
ラーンの声は、酒場の喧騒をかき消すほど大きく、周りの客の目を集めていた。イシェはため息をつき、ラーンの視線を感じながら答えた。
「今日の報酬は悪くなかったんだから、少しは喜びなよ」
「ああ、わかってるって。でもさ、大穴を見つけるのはいつになるんだ?このペースじゃ一生ビレーから出られないぞ!」
ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の瞳に映る未来を想像し、胸が締め付けられた。ラーンの夢は、イシェの現実とはかけ離れているように思えた。
「それより、テルヘルは何を考えているんだ?」
イシェは突然話題を変えた。テルヘルの目的は謎のままだった。彼女がヴォルダンへの復讐を誓うことは知っているが、その方法や、なぜラーンとイシェを利用するのか、理解できなかった。
「ああ、あれはわからないな。でも、強い女だ。あの目つきじゃ、騙すのは難しいぞ」
ラーンの言葉に、イシェは少し安心した。テルヘルが彼らを裏切らないことを願っていた。しかし、心の奥底では不安が消えなかった。
その夜、イシェは眠れなかった。ラーンの無邪気な笑顔と、テルヘルの冷たい視線が頭の中に焼き付いていた。ビレーの街灯が揺れる影に、二人の姿が重なるように見えた。
イシェは自分の進むべき道を見失っていた。ラーンに従うのか、それともテルヘルに協力するのか。そして、自分が本当に望んでいるものは何なのか。答えが見つからないまま、イシェは夜明けを迎えるのを待った。