「よし、今日はあの崩れた塔だな!」ラーンが拳を握りしめた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「あの塔は危険だって聞いたぞ。崩落の箇所も多いし、中も獣がうようよいるって噂だ」
「そんなこと言わずにさ、イシェ。大穴が見つかったら金持ちになれるんだぞ!」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をつきながら、「大穴なんて見つかるわけないだろう。それに、テルヘルさんがくれた報酬で、もうしばらくは暮らせるはずだ」と呟いた。
テルヘルは影のある顔つきで彼らをじっと見つめていた。「今回は特別だ。あの塔には、ヴォルダンが欲しがるものがあるらしい。それを手に入れることができれば、我々の復讐も一歩近づく」彼女の言葉にラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。
塔の入り口は崩れかけており、不安定な足場を慎重に進んでいく必要があった。獣の咆哮が聞こえる中、イシェは「ここには何かいるぞ…!」と警告を発した。ラーンの剣が光り、イシェは影のように敵の後方を取り囲んだ。激しい戦いの後、彼らはようやく塔の中へ足を踏み入れた。
広がる遺跡の奥深くには、不思議な光を放つ石碑があった。テルヘルは興奮気味に石碑に近づき、触れた瞬間、その石碑が輝きを増した。すると、壁から奇妙な音が響き渡り、石碑の上部が開いていく。
そこには、輝く宝石が敷き詰められた宝箱があった。ラーンの目は丸くなり、イシェも思わず息を呑んだ。「大穴だ…!」ラーンは叫んだ。テルヘルは冷静に宝箱を開け、中にあるアイテムを確認した。それは石碑と同じ材質の小さな水晶だった。
「これは…ヴォルダンが探していたものだ」テルヘルはつぶやいた。「これで、我々の復讐は加速する…」彼女は水晶を懐にしまい、満足げに言った。「よし、これで十分だ。帰ろう」。
イシェは宝箱の中に何か残っていないか確認しようとしたが、ラーンはすでに外へ出ていた。彼は興奮気味に「次はどこに行くんだ?もっと大きな遺跡を探そうぜ!」と言った。イシェはため息をつきながら、テルヘルの顔色を窺った。
テルヘルは微笑みを浮かべていた。「いいだろう。次の目的地は、あの山脈の奥だ…」彼女の瞳には、復讐心だけでなく、何か別の感情が宿っていた。そして、その水晶は、彼女の手の中で、まるで生きているかのように微かに光っていた。
イシェは気がかりな気持ちを抱きながら、彼らの後ろを歩いた。宝箱に眠る宝石は、彼らにとって大きな財産になるだろう。しかし、イシェの心には、どこか不安な予感がつきまとう。あの水晶が持つ真の意味、そしてテルヘルの本当の目的。その答えを知るためには、彼らはまだ長い道のりを行く必要があった。