ラーンの大雑把な計画をイシェが眉間にしわを寄せながら確認していた。遺跡の地図を広げ、テルヘルが示した地点を指さす。
「ここは崩落の可能性が高い場所だ。慎重に進まないと」
イシェの言葉にラーンは軽く笑った。「大丈夫だ、イシェ。俺たちが倒せない壁はないぜ！」
しかし、彼の豪快な声は、テルヘルの鋭い視線に打ち消された。彼女は地図から目を上げ、ラーンとイシェを見据える。その瞳には、かつて奪われた故郷を思い出すかのような冷たい光が宿っていた。「成功のためなら、どんなリスクも覚悟する必要がある」
遺跡内部は湿気で重く、薄暗い通路は、まるで巨大な獣の口の奥深くへと続くように感じた。ラーンとイシェは互いに背を預け、歩を進めた。イシェの細い手は、緊張からかラーンの腕に軽く触れた。ラーンの背筋に電気が走ったが、彼はその感覚を無視して前方を進んだ。
崩落現場に着くと、巨大な石壁が通路を塞いでいた。テルヘルは冷静に状況を見極め、石壁の隙間から探るように言った。「ここに何かがあるはずだ」
イシェは懐中電灯を照らしながら石壁を慎重に探っていった。すると、小さな凹みが発見された。ラーンの力強い腕が石を押し広げると、そこには光る宝石が埋め込まれた小さな箱が見つかった。
「やったぜ！」
ラーンは大声を上げた。イシェは小さく微笑んだ。テルヘルは宝箱を手に取り、その重みに満足したように頷いた。その時、崩落が始まった。石壁が崩壊し、彼らはわずかに間を縫って逃げることに成功した。振り返ると、通路は完全に埋まってしまった。
安全な場所に着くと、イシェがラーンの腕に触れながら、震える声で言った。「あの時、抱きしめられたらよかったのに…」
ラーンは言葉に詰まった。彼は自分の無計画さゆえにイシェを危険にさらしたことを深く反省していた。テルヘルは彼らのやり取りを静かに見つめていた。彼女の心には複雑な感情が渦巻いていた。復讐のため、そしてこの仲間たちと過ごす時間を大切にしたいという気持ち。そして、失った故郷への深い悲しみ。
彼らは宝箱を開け、その中に眠る秘密を探るために、再び遺跡へと足を踏み入れた。