「よし、準備はいいか?」
ラーンが笑顔で剣を構えると、イシェはため息をついた。
「いつものように何も考えてないんじゃないだろうな?」
「大丈夫、大丈夫!今回は絶対何か見つかる予感がするんだ!」
ラーンの豪快な声と、イシェの冷静な声が遺跡の入り口にこだました。テルヘルは二人を見下ろしながら、薄暗い通路をゆっくりと歩み始めた。
「あの石碑の奥に何かあるって聞いたことがあるわ」
テルヘルの言葉にラーンは目を輝かせたが、イシェは眉間にしわを寄せた。
「あの石碑は呪われているって噂じゃないのか?」
「そんな噂は気にすんな!大穴が見つかるかもしれないんだぞ!」
ラーンの熱意に押されるように、イシェも仕方なく進んでいった。テルヘルは二人を後ろからじっと見つめていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなかった。彼女はヴォルダンとの戦いに必要な情報、そして復讐の道具を求めている。そのためには、ラーンとイシェを利用する必要があるのだ。
遺跡の中心部に到着すると、巨大な石碑がそびえ立っていた。その表面には複雑な文字が刻まれており、不気味な空気を漂わせていた。
「よし、ここだ!」
ラーンは興奮気味に石碑を調べ始めたが、イシェは不安げな表情で周囲を見回した。
「何か変だな…」
その時、石碑の表面に光が走り、突然、激しい風が吹き荒れた。ラーンとイシェはバランスを崩し転倒した。テルヘルだけが落ち着いてその場にとどまり、石碑に刻まれた文字を見つめていた。
「これは…!」
テルヘルの表情が硬くなった。彼女は石碑の文字から、ある秘密を知ってしまったのだ。それはヴォルダンに関する衝撃的な事実だった。
そして、その瞬間、石碑の奥から何かが動き出した。ラーンとイシェは立ち上がり剣を構えるが、目の前には巨大な影が迫っていた。
「何だこれは…!」
ラーンの叫び声と共に、遺跡は恐怖に包まれた。テルヘルは冷静に状況を判断し、ある決断を下した。
「二人とも、逃げろ!私は後を追う!」
イシェは一瞬戸惑ったが、ラーンはすぐにテルヘルの指示に従い、彼女と共に遺跡の出口へと走り出した。しかし、巨大な影は二人を追いかけてきた。
テルヘルは振り返り、石碑に刻まれた文字をもう一度確認した。彼女は今、重要な情報を手に入れた。それはヴォルダンを倒すための鍵となる情報だった。だが、その情報は、ラーンとイシェにはまだ伝えられない。
なぜなら、今は彼らを安全な場所に逃がすことが最優先だからだ。そして、自分だけでヴォルダンに立ち向かう覚悟を決めたからである。
テルヘルは影に向かって剣を構え、決意を固めた。彼女はもう一人じゃない。ラーンとイシェという仲間がいる。そして、必ず復讐を果たすのだ。