「おい、ラーン、今日はどこ行くんだ？」イシェが眠そうな目をこすりながら尋ねると、ラーンはいつも通りの元気な声で答えた。「今日はあの東の丘にある遺跡だ！聞いた話によると、そこで珍しい鉱石が見つかったらしいぞ！」
イシェはため息をついた。「また噂話に騙されるのか？そんな安易な考えで財宝が見つかるわけないだろう」ラーンはイシェの言葉には耳を貸さず、興奮気味に続けた。「でも、もし本当に珍しい鉱石なら大金になるぞ！あのテルヘルも喜ぶはずだ」
テルヘルは最近、遺跡探索の依頼をする際にいつもより高額の日当を支払っていた。その理由は、彼女の目的達成のために特定の遺物が必要だからだとイシェは感じていた。だが、ラーンはそんなことは知ったことかと、テルヘルの依頼を引き受ければ大金が入るだけと考えているようだった。
「よし、準備はいいか？今日は必ず大穴を見つけるぞ！」ラーンの熱意に押され、イシェも仕方なく遺跡へ向かうことにした。遺跡への道中、イシェはラーンに問いかけた。「あのテルヘルがなぜ、そんなに特定の遺物にこだわるのか、考えたことないのか？」
ラーンは首を横に振った。「そんなことより、俺たちは今、大金を稼ぐチャンスを得ているんだ！テルヘルが何のために遺物を集めているかは関係ない」イシェはラーンの言葉に呆れた。彼はいつも自分の利益だけを考えているように見えた。
遺跡に到着すると、ラーンはいつものように無計画に奥へと進んでいった。イシェは慎重に周囲を確認しながら、ラーンについて行く。遺跡の奥深くで、彼らは大きな石棺を発見した。石棺の上には複雑な紋章が刻まれており、テルヘルが特に求めていた遺物の一つだとイシェはすぐに理解した。
「これは…」イシェは息を呑んだ。「まさにテルヘルが探していたものだ」ラーンは石棺の蓋を開けようとしたが、イシェは彼を制止した。「待て！これは危険かもしれない。罠が仕掛けられている可能性もある」
しかし、ラーンの耳には届かなかった。彼は興奮を抑えきれず、無理やり石棺を開けてしまった。すると、石棺の中から不気味な光が放たれ、部屋中に広がった。イシェは恐怖で声を上げたが、ラーンは目を輝かせ、石棺の中を覗き込んだ。「これは…！」
その時、石棺から強烈な光が噴出し、ラーンを包み込んだ。ラーンは悲鳴を上げながら倒れ込み、意識を失ってしまった。イシェは慌ててラーンに駆け寄った。
「ラーン！どうしたんだ！？」イシェはラーンの顔色を見つめ、恐怖で震えた。その時、テルヘルが現れた。「これは…」テルヘルも石棺の光を見て驚愕していた。「これは…投資だ」
彼女は冷静に言った。「この遺物は、私の目的達成のための重要な投資となる」そして、イシェに告げた。「ラーンは犠牲になったが、私はこの投資によって必ず成功する。お前も、私の計画の一部として参加することを望むか？」