「よし、入ろう!」ラーンの豪快な声がビレーの郊外にある遺跡の入り口にこだました。イシェは眉間にしわを寄せながら彼を追いかけた。いつも通り、ラーンは計画もなしに遺跡へ飛び込んでいく。
「待て!ラーン、今回は様子を見ないと…」イシェが言った途端、地面が激しく揺れ始めた。ラーンの足元から砂埃が吹き上がり、崩落が始まったのだ。「ひっ!」イシェの叫び声は風と共に消えていった。
Terihelは冷静に状況を判断した。この遺跡は過去の調査報告では特に危険な場所として記されていた。だが、今回の依頼主であるヴォルダン貴族からの情報には、遺跡内部にあると噂される「禁断の書」に関する記述があった。その書はヴォルダンが所有する強力な魔導具の鍵になると言われていた。
彼女は剣を抜いた。「ラーン!イシェ!」 Terihelの声が響き渡る中で、崩落した場所から二人が姿を現した。「無事か?」 Terihelは安堵のため息をつきながら尋ねた。ラーンはいつものように無傷で、イシェは少し埃まみれになっていた。
「ああ、大丈夫だ。 Terihelさん、あの崩壊はわざとらしいな…」ラーンの言葉にイシェが眉をひそめた。「わざと?」 Terihelも疑問を感じた。「確かに、崩落の仕方が自然ではない…もしかしたら…」
その時、 Terihelは何かを察知した。崩落地点から、かすかに青白い光が漏れていることに気づいたのだ。「これは…」 Terihelは心を強く締め付けた。この遺跡には、ヴォルダン貴族が隠しているものがある。そして、それは単なる「禁断の書」ではないかもしれない。 Terihelは深く息を吸い込み、決意した。
「ラーン、イシェ、私達はこの遺跡の奥へ進む。そして、真実を明らかにする。」 Terihelの声は、まるで鉄のように硬く響き渡った。