ラーンの大声がビレーの朝霧を切り裂いた。「よし、今日は必ず何か見つかるぞ!イシェ、テルヘル、準備はいいか?」
イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、「また大口叩いてるわね。準備はいいけど、今日の目標は何なの?遺跡は山ほどあるのに、いつも漠然としているのよ」と冷静に返した。
テルヘルは鋭い視線でラーンを見据え、「今日はあの東部の遺跡だ。情報によると、そこにはヴォルダンが探している遺物があるらしい」と静かに言った。その声は氷のように冷たかった。
ラーンの顔色が一瞬曇り、すぐにいつもの明るさを取り戻した。「そうか!ヴォルダンか!よし、そいつを手に入れてやるぜ!」
イシェはテルヘルの言葉を聞いて背筋が凍り付いた。ヴォルダン関連の情報はいつも危険を伴う。彼女はラーンの無鉄砲さに絶望しながらも、彼らを止めることはできなかった。
遺跡への道は険しく、獣の咆哮がこだまする暗い森を抜ける必要があった。ラーンは軽々と岩場を駆け上がり、イシェは慎重に足場を確認しながら進む。テルヘルは後ろから二人を見つめ、常に警戒を怠らなかった。
遺跡の入り口には崩れ落ちた石碑が立っていた。イシェは石碑に刻まれた文字を解読し、「警告だ…この遺跡は危険だ」と呟いた。しかし、ラーンの耳には届かなかった。彼は興奮気味に遺跡へ駆け込んだ。
遺跡の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。壁には謎の絵が描かれており、床には奇妙な模様が刻まれていた。ラーンは目を輝かせ、宝の在り処を探し始めた。イシェは不安を隠せない様子で彼に注意を促したが、ラーンの耳は塞がれていた。
突然、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちていった。「ラーン!」イシェとテルヘルの叫び声が響き渡った。
穴の底では、ラーンは意識を失っていた。彼が目を覚ますと、そこは奇妙な空間だった。天井から光が降り注ぎ、壁には美しい模様が浮かび上がっていた。そして、中央には輝く石像が置かれていた。
石像に触れた瞬間、ラーンの脳裏に情報が流れ込んだ。それは遺跡の過去、そしてヴォルダンとの関係性に関するものだった。
意識を取り戻したラーンは、自分がどれほど大きな秘密に触れたのかを理解した。彼は立ち上がり、イシェとテルヘルにその真実を伝えようと決意した。しかし、その時、背後から冷酷な声が聞こえた。「なかなか面白い場所を見つけたようだな…」