「よし、行こうぜ!」ラーンの豪快な声と共に、ビレーの町外れから遺跡へと続く山道が賑わいを取り戻した。イシェはいつものように眉間に皺を寄せ、「また、行き当たりばったりか…」と呟いた。ラーンはいつも通り、計画もなしに遺跡探索に乗り込もうとする。
だが、今回は違う。今回はテルヘルが加わっている。彼女は鋭い瞳で周囲を見回し、地図を広げながら「ここには古い碑文があったはずだ。あの石柱の影に隠れている可能性が高い」と冷静に指示を出す。イシェはテルヘルの言葉に少し安心感を覚えた。ラーンの行動にはいつもハラハラさせられるが、テルヘルがいることで何かと心強い。
遺跡の入り口に着くと、ラーンは早速剣を抜き、「よし、行くぞ!」と意気揚々と言いかける。だが、テルヘルが静かに手を挙げた。「待て。まずは罠がないか確認する必要がある」。イシェも同意するようにうなずいた。
テルヘルは慎重に周囲を調査し、石畳の隙間にある小さな穴から微量の毒ガスが漏れていることに気づいた。彼女は持ち合わせていたハーブを粉末状にして穴に撒き、毒ガスの拡散を防いだ。「この遺跡は意図的に罠が仕掛けられているようだ。注意が必要だ」とテルヘルは警告した。
ラーンは「そんな面倒なことはいいんだ!早く宝探しをしようぜ!」と叫び、遺跡の中へ飛び込んだ。イシェはため息をつきながら、テルヘルに「彼、いつもこんな感じなんです…」と謝った。
テルヘルは小さく笑みを浮かべ、「大丈夫。私は彼の力が必要なのだと信じている」と言い、イシェと共に遺跡の中へと続く階段を降りていった。