ラーンの大斧が石壁に深く食い込み、崩れ落ちる塵埃の中をイシェの細い声がかすかに響いた。「またしても行き止まりか…」。イシェは眉間に皺を寄せ、地図を広げる。ビレー周辺の遺跡は調査を重ねても謎が多く、いつもどこかで行き詰まるのが常だった。ラーンは肩をすくめて、「まあ、そんなもんだろ」と笑ったが、イシェには彼の強がりも虚しく思えた。「今日はもう帰ろう」。イシェはそう告げようとした時、テルヘルが立ち止まり、鋭い視線で壁を睨んでいた。
「何か?」ラーンが尋ねると、テルヘルは静かに頷いた。「壁の模様…どこかで見たことがある」彼女は懐から小さな石板を取り出し、壁に刻まれた模様と照らし合わせた。石板には複雑な記号が刻まれており、テルヘルはそれを熟知しているように一つひとつ丁寧に指を滑らせていった。「これは…」彼女の瞳孔がわずかに広がり、興奮を抑えきれない様子だった。「古代ヴォルダンの技術…ここに秘伝の技法が隠されているかもしれない」。
ラーンの顔色が明るくなり、「おっと、大穴が見つかるかもな!」と目を輝かせた。イシェはテルヘルの言葉に少し不安を感じながらも、ラーンの熱気に巻き込まれそうになる。壁を指差すテルヘルの指示に従い、彼らは慎重に石を削り始めた。壁の奥底には、何世代にも渡って秘められた古代ヴォルダンの技法が眠っていたのだ。