「よし、行こう！」ラーンが豪快に笑うと、イシェはため息をついた。「また無計画だな。あの遺跡は危険だって何度も言っただろう」イシェの言葉にラーンは「大丈夫だ、大丈夫！今回はきっと何か見つかるぞ！」と自信満々に答える。
テルヘルは静かに二人を見つめていた。「準備はいいか？」彼女の鋭い視線にラーンとイシェは小さく頷いた。三人はビレーの外れにある、荒れた遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡の入り口は崩れ落ち、内部は暗闇に包まれていた。ラーンの持つ松明の火が揺らめき、壁を飾る奇妙な彫刻を浮かび上がらせる。イシェは慎重に足取りを確かめながら、周囲を見回した。「ここは以前にも来たことがある。あの奥の部屋に何かあったはずだ」
「そうだ！あの時、僕、なんか光るものを見たんだ！」ラーンの目が輝き出す。「今回は必ず手に入れるぞ！」彼は興奮気味に奥へと進んでいく。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「彼を止められないわよね？」テルヘルは小さく微笑む。「大丈夫だ。彼の行動は予測可能だ」
深く遺跡内部へ進むにつれ、空気が重くなり始める。不気味な静寂と、かすかに漂う腐った臭いが彼らを包み込む。イシェは背筋が寒くなるのを感じた。「何かいる気配…」。ラーンの呼吸も荒くなった。「何かあったら、すぐに僕に言えよ！」
その時、突然、床から何かが飛び出した！ラーンは反射的に剣を振り下ろす。影は素早く動き、ラーンの攻撃をかわした。「何だ！？」イシェは驚いて叫んだ。その影は、人型の奇妙な生き物だった。
「これは…！」テルヘルが声を張り上げる。「この遺跡には、伝説の『託卵』と呼ばれる危険な生物が生息すると聞いたことがある…」その言葉にラーンとイシェは顔を見合わせた。
戦いが始まる。ラーンの剣が影を斬り裂き、イシェの機敏な動きで攻撃をかわす。しかし、影は数が多く、なかなか倒せない。テルヘルは冷静に状況を判断し、二人を指示しながら戦い続ける。
激しい戦いの末、ついに影たちを全て倒した。ラーンとイシェは息も絶え絶えだった。「よし、これで…」ラーンの言葉が途絶える。彼の足元には、割れた卵の殻があった。中からは、奇妙な模様が刻まれた石が輝いている。
「これは…？」イシェが近づき、石を手に取った瞬間、激しい光が周囲を包み込んだ。
三人は目をぎゅっと閉じた。そして、光が消えた時、彼らはすでに遺跡の外に立っていた。目の前には、広がるビレーの街並みが広がっていた。