ラーンが遺跡の入り口で、いつものように大げさなポーズを取って剣を構えた。「よし、イシェ!今日は必ず何か見つけるぞ!大穴だ!」
イシェはため息をつきながら、地図を広げた。「また大穴か。ラーン、そんな夢ばかり見ていると、いつまでたってもビレーから出られないよ。」
「大丈夫、大丈夫!いつか必ず掘り当ててやるんだ!」ラーンの自信に満ち溢れた声とは裏腹に、イシェは彼のことを見透かしたような視線で見ていた。
遺跡内部は薄暗い。ラーンが先頭を歩き、イシェが後をついていく。時折、崩れそうな石や落とし穴が現れる。緊張感の中にも、どこか不思議な魅力があった。
「ここは一体何だったんだろうね…。」イシェが呟くと、ラーンの顔色が変わった。「何かあったのか?」イシェが尋ねると、ラーンは少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「実はな…俺、この遺跡について何か聞いたことがあるんだ。昔、ビレーの老人が…」ラーンの声が低くなった。「かつて、この遺跡には、ある男が住んでいたって言うんだ。ヴォルダン出身で、強力な魔法使いだったらしい。そして、彼は…」
ラーンは言葉を濁し、「でも、それはただの噂だ」と付け加えた。イシェは彼の様子をじっと見つめた。「噂…か。」
その時、突然、遺跡の奥から音が聞こえてきた。金属同士がぶつかり合うような音だった。ラーンとイシェは顔を見合わせ、互いに頷き合った。何かがいる。
慎重に進むと、広い部屋に出た。中央には大きな祭壇があり、その周りには何人かの人影が立っていた。彼らは黒装束を身にまとい、奇妙な仮面をかぶっていた。そして、祭壇の上には、輝く石が置かれていた。
「あれは…!」イシェの驚きの声に、ラーンも息をのんだ。それは、噂の伝説の宝石だった。
その時、黒装束の人影の一人が振り返り、ラーンの顔を見た。「お前だ…!あの男の弟子か…」その声には、激しい憎しみと怒りが込められていた。
ラーンの表情が硬くなった。「お前は…!」
黒装束の男はゆっくりと剣を抜いた。「お前を始末し、あの男の仇を取らねばならぬ!」
イシェはラーンの肩に手を置いた。「ラーン、逃げよう!」
しかし、ラーンは立ち尽くしていた。彼の目は、どこか遠くを見つめていた。まるで、過去の何かを思い出すように…そして、その中に、打ち明け話をするかのような静けさがあった。