「よし、入ろうぜ!」
ラーンが力強く扉を開け、薄暗く湿った遺跡内部へと足を踏み入れた。イシェは後ろから続くラーンの背中にため息をつきながら、懐中電灯の光を慎重に ahead に当てていった。テルヘルは二人より少し遅れて入ってくる。彼女の鋭い視線は、壁一面に広がる謎の記号や崩れ落ちた石像をくまなく走り抜けていく。
「ここ、以前にも来たことある気がするんだけどな…」
ラーンの言葉にイシェが小さく頷く。彼らは数年前から、この遺跡周辺で調査を行っていた。だが、そのたびに新たな通路や部屋を発見するものの、肝心の財宝は見つからなかった。
「今回は違うぞ、イシェ。」
ラーンは目を輝かせながら言った。「テルヘルが言うには、ここには何か大きな秘密が隠されているらしいんだって。もしかしたら、俺たちがずっと夢見てきた大穴が見つかるかもな!」
イシェは苦笑いを浮かべながら、ラーンの背中に手を置いた。「気をつけなさいよ、ラーン。テルヘルは情報を与えてくれるけど、目的はあくまで彼女自身のものだ。私たちには何の保証もないのよ。」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちには俺たちのやり方があるんだ!」
ラーンは自信満々に笑った。だが、その笑顔にはどこか不安げな影がちらついているように見えた。テルヘルは彼らに遺跡調査を依頼する際に、ある条件を突きつけてきた。「この遺跡から得た情報、そして遺物は全て私に渡すこと。」と。
イシェはラーンの言葉の裏に隠された意味を察していた。彼はテルヘルの真意を知りながらも、彼女に従うことを決めたのだ。なぜなら、彼には打ち明けなければならない秘密があったからだ。それは、彼が遺跡探索の目的が単なる財宝獲得ではないということを打ち明けられず、一人で抱えていた事実だった。
「よし、行くぞ!」
ラーンが再び声を張り上げた。イシェは深く息を吸い込み、テルヘルに続くように遺跡の奥へと進んでいった。彼らの足音が、静寂に満ちた遺跡内部で響き渡り、やがて消えていく。