ラーンが石の表面を撫でると、その冷たさと粗さに心がざわついた。いつもと違う、何かを予感させるような重厚感があった。イシェは彼の後ろで、小さくため息をついた。「またかよ、ラーン。いい加減にしろ」
「いや、でもさ、今回は違う気がするんだ!」ラーンの目は輝いていた。「この遺跡…なんか独特の空気が流れてるんだよな。ほら、触ってみろよ」
イシェは渋々石に触れた。確かに、いつもより冷たい。そして、指先に僅かな振動が伝わってくる。まるで、石の中に何かが眠っているような感覚だった。彼女は眉をひそめた。「まあ、もしやするかもしれないけど…」
その時、テルヘルが鋭い声で言った。「静かにしろ。何かが聞こえる」
三人は息を呑んで周囲を見回した。すると、奥の方から、かすかな金属音と石の擦れ合う音が聞こえてきた。まるで、巨大な歯車がゆっくりと回転しているような音だった。
「何だ…?」イシェは不安そうに言った。ラーンは剣を握りしめ、テルヘルは眉間に皺を寄せた。「準備はいいか」とテルヘルが告げると、三人は慎重に奥へと進んでいった。
薄暗い通路を進み、やがて広がる空間を見つけた時、彼らの息が止まった。そこは巨大な機械装置が配置された部屋だった。複雑に絡み合う歯車やパイプ、そして、中心には光る球体が浮かんでいた。
「これは…一体…」ラーンの言葉は途絶えた。イシェは思わず手を伸ばし、球体を触ろうとした。その時、球体から強い光が放たれ、彼女の手の平を包んだ。
「うわっ!」イシェは悲鳴を上げて後ずさった。光はすぐに消え、彼女の手に残ったのは、小さな水晶のかけらだった。水晶は温かく、滑らかで、まるで生きているかのように脈打していた。
「これは…何か?」イシェは水晶を握りしめ、目を輝かせた。「もしかして…」
ラーンは彼女の言葉を遮り、興奮した声で言った。「宝だ!ついに大穴を見つけたぞ!」
テルヘルは冷静に状況を判断し、鋭い視線で周囲を警戒した。そして、ゆっくりと口を開いた。「まだ安堵するのは早い。ここはまだ危険がいっぱいだ」
三人は互いに顔を見合わせた。水晶の温かさが手のひらに残り、彼らの運命を大きく変える予感がした。この遺跡は、単なる宝の山ではなく、何か大きな秘密を抱えているようだった。