ラーンの粗野な剣が遺跡の奥深くにある石壁を切り裂いた。埃が舞う中、イシェは咳き込みながら、薄暗い空間を見回した。「ここか…何かある気もするけど…」
「ああ、絶対何かあるって！ほら、あの紋章、見たことあるだろ？」ラーンは興奮気味に言った。確かに、壁には複雑な模様が刻まれていた。イシェは懐から小さな石板を取り出し、模様と照らし合わせた。「これは…ヴォルダンの古代文字だ。ここに何かの警告文が書かれているかも…」
「警告文？そんなのどうでもいいだろ！宝探しの邪魔するな！」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。その時、後ろから冷たげな声が響いた。「宝探しなど、時間の無駄です。この遺跡には危険が潜んでいることを忘れないでください。」テルヘルがそう言いながら、石板を手に取り、壁の紋章を慎重に観察した。
「この文字…ヴォルダンが封印した何かを解き放つ鍵になる可能性がある。もしそれが真実であれば…」テルヘルは言葉を濁し、ラーンとイシェに鋭い視線を向けた。「我々の目的は宝ではありません。この遺跡の秘密を暴くことなのです。」
ラーンの顔色が変わった。「待てよ、お前ら…俺たちに何やらせようとしてるんじゃないだろうな？」イシェも不安げにテルヘルを見つめた。だが、テルヘルの表情は一切動かなかった。「私は約束を守ります。遺跡の秘密と引き換えに、あなたたちには十分な報酬を…」テルヘルはそう言うと、小さな袋から金貨を数枚取り出し、ラーンの手に手渡しした。「この金額で十分でしょうか？」
ラーンは金貨を握りしめ、渋々頷いた。イシェはまだ不安げだったが、テルヘルの決意に押しつぶされそうになった。遺跡の奥深くで、何かが蠢いている気がした。そして、その影は彼らを手招きするように揺れていた。