ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは石畳の路地裏を慎重に進む。日差しが射し込む場所と影が重なり合う狭く不気味な空間だ。テルヘルが「遺跡への近道だ」と告げたこの路地は、確かに地図には載っていない。
「本当に大丈夫か?」イシェが不安そうに呟くと、ラーンは背後から軽く叩きつけながら「大丈夫だって!テルヘルが言うなら間違いないだろ?それに、早く遺跡に行かないと日が暮れるぞ!」と豪快に笑った。イシェは苦笑するしかなかった。
彼らは目的地である崩れかけた石造りの建物に着いた。テルヘルが先導し、イシェとラーンは互いに気を利かせながら後を続いた。建物内部は薄暗く湿っていた。埃っぽい空気が鼻腔をくすぐり、腐敗した木の臭いが漂ってくる。
「ここだ」テルヘルが、苔むした石壁の一角を指差した。そこには、崩れかけた石版が埋まっているように見える。「この石版に刻まれた文字を解読すれば、遺跡の真 entrance が見つかるはずだ」と彼女は言った。
イシェは懐から小さなランプを取り出して石版に照らした。しかし、石版の表面は深く摩耗しており、文字はほとんど判読できない状態だった。
「こんなんで解読できるわけないだろう…」イシェがため息をつくと、ラーンは不機嫌そうな顔で言った。「おい、テルヘル!これじゃ全然ダメだろ!早く別の方法を考えろ!」
テルヘルは冷静にラーンの言葉に反論した。「この石版には魔法がかかっている。解読するには特別な知識と技術が必要だ。だが、私はその方法を知っている」彼女はそう言うと、ポケットから小さな水晶の球を取り出した。「これは古代の魔術師が作ったものだ。この球を石版に当てれば、隠された文字が浮かび上がるはずだ」
イシェは水晶の球に目を凝らした。しかし、球には何も映っていない。
「どうしたんだ?効かないのか?」ラーンの声が不穏なものになっていた。テルヘルは少しだけ眉間にしわを寄せ、「もう少し時間がかかるようだ」と言ったが、彼女の表情には自信がなかったように見えた。