ラーンの重い呼吸が埃っぽい空気を満たした。剣を深く突き刺し、岩盤をこじ開けるように力を込めた。轟音と共に崩れ落ちた石塊の下から、鈍い光が漏れる。
「よし、見つけたぞ！」
ラーンは興奮気味に叫び、イシェの視線を感じながらニヤリと笑った。だが、イシェの表情は曇り切っていた。「またか…」彼女の呟きは風に乗ってすぐに消えた。
彼らは数日前からこの遺跡を探し回っていた。テルヘルが持ち出した古い地図には、かつて「失われた王家の墓」と呼ばれた場所を示していたという。だが、実際にはただの崩れかけた石室ばかりだった。それでもテルヘルは「手応えがある」と言い張る。
「もう少しで、何か見つかるはずだ」
テルヘルの言葉にラーンは希望を燃やすが、イシェは懐疑的だった。彼女の鋭い感覚は、この遺跡から漂う虚無感を感じ取っていた。空虚な石室、そしてそこには何もない。まるで何かが意図的に隠されているかのように。
「手応え」という言葉に騙されてはいけない。イシェはそう思った。
だが、その時だった。ラーンの剣が岩盤を貫いた瞬間、地響きと共に巨大な扉が開かれた。その奥には、金と宝石で飾られた壮麗な部屋が広がっていた。中央には、黄金の王冠が鎮座している。
「やったぞ！大穴だ！」
ラーンは興奮して叫んだ。イシェも思わず息をのんだ。確かにこれは、今までに見たことのない規模の宝だった。だが、イシェの心には依然として不安が残っていた。この遺跡、そしてテルヘルの目的。その背後にある真実は何なのか？