ラーンが巨大な石門を押し開けた時、埃っぽい空気が彼らを襲った。イシェは咳き込みながら「またここか…」と呟いた。ビレーの近くの遺跡はどれも似たり寄ったりで、新鮮味に欠けていた。
「よし、今回は大穴だ！」ラーンはいつものように豪語した。イシェは懐疑的な目で彼を見つめた。「大穴なんて、いつまで探すんだい？」
「お前は信じないのか？いつか必ず見つかるさ」ラーンは自信満々に笑った。だが、彼の目は少しだけ曇っていた。
その時、テルヘルが声を張り上げた。「奥に何かあるぞ！」
石畳の通路を進んでいくと、広間の入り口にたどり着いた。そこには、巨大な水晶の球体が浮かんでいた。球体は複雑な模様で覆われており、まるで生きているかのようだった。
「何だあれ…」イシェは息を呑んだ。
テルヘルは水晶球体に向かってゆっくりと歩み寄った。「これは…伝説の『アビスの眼』だ」
彼女は水晶球体に手を伸ばした。すると、球体は突然光り輝き、その光がテルヘルの体全体を包んだ。一瞬後、光は消え、テルヘルは何もなかったかのように立っていた。
「どうだ？」ラーンが尋ねた。
テルヘルは小さく笑った。「この『アビスの眼』は、未来を垣間見せる力を持っている」
イシェは不安そうに言った。「未来？そんな…」
「ああ、未来…そして過去も」テルヘルは目を細めた。「この遺跡には、多くの秘密が眠っている。そして、その秘密を解き明かす鍵となるのは、この『アビスの眼』だ」
ラーンは興奮した様子で言った。「つまり、大穴にたどり着けるってことか？」
テルヘルは頷いた。「だが、その前に…」彼女は水晶球体に向かって手を伸ばし、何かを囁いた。水晶球体は再び光り輝き、その光がラーンの体を包んだ。
「な、何だ？」ラーンは驚いて叫んだ。彼の体は熱くなり、意識が朦朧としてきた。
イシェは慌ててラーンに駆け寄った。「ラーン！どうしたの？」
テルヘルは冷静に言った。「彼は今、未来を見せられているのだ」
イシェは目を丸くした。「未来？でも…」
「心配するな」テルヘルはニヤリと笑った。「彼はすぐに元に戻るだろう。そして、その時に…彼は驚くべきものを手に入れることになる」
イシェはラーンの様子を不安げに見つめた。彼の体は光に包まれ、まるで消えかかっているようだった。
「大穴…」イシェは呟いた。それは希望に満ちた言葉でもあり、同時に恐怖に満ちた言葉だった。