ラーンが遺跡の入り口で息を切らしているのに対し、イシェはいつも通り冷静に周囲を警戒していた。「またか？」と呟きながら、イシェは背後から迫り来るラーンの熱気を感じた。
「おい、イシェ！見てくれよ！今回は絶対何かあるって気がするんだ！」
ラーンは興奮気味に巨大な石門を指差した。その門は、まるで巨人が残したかのような荒々しい造りで、苔むした表面には不思議な文様が刻まれていた。「また大穴だなんて言ってる…」イシェはため息をつきながらも、ラーンの熱気に押されるように、石門に近づいていった。
テルヘルはいつものように一歩後ろを歩く。彼女はラーンの興奮を冷静に見つめながら、石門の文様を分析していた。彼女の目は鋭く、その奥には深い影が宿っていた。「ヴォルダン…お前は必ず…」と呟きながら、テルヘルは拳を握りしめた。
石門の前に立つと、ラーンは興奮を抑えきれずに手を伸ばした。しかし、イシェは彼の腕を掴んだ。「待て。何か変だぞ」とイシェは言った。
石門の表面には、今まで気づかなかった小さな穴が開いていることに気がついた。その穴から微かに赤い光が漏れている。「これは…？」ラーンの戸惑う声に、テルヘルは静かに言った。「罠だ」
その瞬間、石門から轟音と共に毒ガスが噴き出した。ラーンは coughing cough 咳き込みながら後ずさりした。イシェは素早く reacting react ラーンの顔を覆い、テルヘルは咄嗟に魔法の盾を展開し、三人を守った。しかし、毒ガスは広がり続け、彼らの視界を奪っていく。
「逃げろ！」テルヘルの叫び声がかすかに聞こえた。ラーンとイシェは互いに助け合いながら、朦朧とする意識の中で石門から逃げるように後退した。
毒ガスの影響で、三人は激しい頭痛と吐き気に襲われた。視界がぼやけ、足元が不安定になった。イシェはラーンの手を強く握りしめ、彼を支えようとした。「大丈夫…大丈夫…」と繰り返すイシェの言葉も、徐々に聞き取れなくなっていく。
そして、三人は意識を失った。石門の前で、毒ガスに包まれたまま。彼らの運命は、まだ誰にも分からなかった。