「よし、今日はここだな」。ラーンが古い地図を広げ、指を置く。イシェは眉間にしわを寄せた。「また遺跡か。あの辺りはヴォルダンの兵士が出没するって聞いたぞ」。ラーンは笑い飛ばす。「心配すな。テルヘルさんがいるんだから大丈夫だろう?それに、大穴が見つかったらあの兵どもも足止めになるぞ!」
イシェはため息をつきながら、準備を始めた。テルヘルはテーブルに肘をついて、鋭い目を地図に落とす。「情報によると、この遺跡には古代ヴォルダン軍の戦功を記録した碑文があるらしい。もしそれが真実なら…」彼女は言葉を濁す。「我々の目的には非常に有用な情報になるだろう」。
ラーンの目が輝いた。「戦功か!あの兵どもが恐れを抱くような戦功なら、きっと大穴に繋がるぞ!」イシェは諦めたように頷いた。ラーンとテルヘルはいつもそうだった。危険を顧みず、大きな夢を追いかける。だが、イシェには彼らの熱意が理解できないわけではない。彼らと一緒にいることで、自分のつまらない日常から逃れることができるからだ。
遺跡の入り口に立つと、不気味な静けさに包まれていた。石畳は苔むし、崩れかけた壁からは野草が生えていた。「ここか…」テルヘルが呟く。「気を引き締めていくぞ」。ラーンは剣を抜き、イシェも小刀を握り締めた。彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。
暗闇の中、足音が響き渡る。突然、壁に影が映った。ラーンが飛び上がると、巨大な石像が現れた。石像の目は赤く光り、鋭い牙を剥いていた。「ヴォルダンの守護神か!」ラーンは剣を振るった。イシェも小刀で石像の足元を狙う。
激しい戦いが始まった。石像は頑丈で、攻撃をものともしない。ラーンの攻撃が石像に届くと、かすかにひびが入った。「見つけたぞ!弱点だ!」イシェが叫ぶ。ラーンは力を込めて剣を振り下ろした。石像は崩れ落ちた。
戦いが終わり、息を切らして立ち上がる3人。テルヘルは碑文を見つめていた。「ここに書かれているのは…ヴォルダン軍の戦功記録ではなく、古代の英雄の戦いの物語だ」。イシェは肩を落とした。「また大穴には繋がらなかったのか…」
ラーンはニヤリと笑った。「まあ、いいじゃないか。戦いの記録だって価値があるぞ!きっと歴史に名を刻むような戦いでしょ?」イシェは苦笑する。ラーンの楽観的な態度に少しだけ救われた気がした。 3人は遺跡から出て、夕暮れの街へと戻っていった。