「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。二人は互いに頷き、緊張した面持ちで遺跡の入り口へと足を踏み入れた。いつものようにラーンの気分で遺跡を選んだため、今回は特に危険な場所だとイシェは感じていた。
地下深くへと続く狭い通路を進むにつれ、壁には奇妙な文様が刻まれており、不気味な空気が漂う。ラーンが先頭を切って進んでいくが、イシェはいつも以上に神経を尖らせて周囲を観察していた。テルヘルは後ろから二人を見つめながら、何かを呟いていた。
「ここには罠があるはずだ」
イシェの言葉にラーンが振り返ると、テルヘルの顔色が険しくなっていた。「罠か…」ラーンの表情も引き締まる。「じゃあ、どうする？」
「慎重に進もう。急いで進もうとすると、危険だ」イシェは冷静に言った。
だが、ラーンの足は止まらなかった。彼は興奮した様子で遺跡の奥へと進んでいく。イシェが振り返ろうとした時、背後から激しい音が響き渡った。
「ラーン！」イシェの声を掻き消すように、巨大な石板が落下し、ラーンを飲み込むようにして地面に激突した。
「ラーーン！」イシェは絶叫し、石板の下敷きになったラーンの姿を探した。テルヘルも慌てた様子で石板を押し上げようとした。だが、その重さは想像を絶するもので、二人では動かすことはできなかった。
その時、イシェが何かを閃いた。「待て！」イシェは叫び、近くの壁にある奇妙な模様に目をやった。それは、彼が以前見た古代の書物で一度目にした記号だった。彼は慌ててその記号を指さし、テルヘルに言った。「あの記号を押せ！」
テルヘルが躊躇する様子を見せたが、イシェの真剣な表情を見て、すぐに記号を押した。すると、壁から光が放たれ、石板がゆっくりと持ち上げられた。
ラーンの姿が現れた時、イシェは安堵の息を吐いた。だが、ラーンは意識を失っていた。テルヘルはすぐに彼の傷を診始めた。
「大丈夫だ。重症ではないようだ」テルヘルは言ったが、声には少し震えがあった。「しかし、今回は運がよかった。もっと慎重に進まなければいけない。」
イシェは頷いた。ラーンの無謀さはいつも彼を心配させている。だが、今回の出来事を通して、イシェもまた何かを感じた。それは、自分自身の中に眠っている可能性、そして成長への希望だった。