「よし、今日はあの迷宮跡に潜るぞ!噂によると、奥深くには未開の部屋があるらしいんだ。」ラーンが剣を肩に掛け、目を輝かせた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら、「また噂話か?そんな安易な考えで財宝が見つかるわけないでしょう。」と冷静に反論した。
「ほらほら、イシェ。せっかくの冒険だぞ!たまには夢を見てみてもいいじゃないか。」ラーンはそう言うと、イシェにニヤリと笑いかけた。イシェはため息をつきながらも、結局はラーンの後ろをついていくことにした。
テルヘルは彼らのやりとりを冷酷な目で見ていた。「あの迷宮跡は危険だ。特に奥深くには…」彼女は言葉を濁したが、ラーンとイシェは既にその場から立ち去っていた。テルヘルは彼らを追いかけるように歩き始めた。彼女の足取りは軽やかで、まるで影のように静かに進む。
迷宮跡の入口には、かつて栄華を極めた古代文明の遺跡が残されていた。崩れかけた石柱や壁画には、遠い昔の人々の暮らしぶりや信仰が垣間見えるようだった。イシェはこれらの遺跡をじっと見つめながら、「どこか懐かしい気持ちになる…」と呟いた。
ラーンはそんなイシェの姿を見て、少しだけ優しい表情を見せた。「お前も、いつか故郷の風景を懐かしむ日が来るのかな?」ラーンの言葉に、イシェは小さく頷き、再び歩き始めた。
迷宮跡深くへと続く通路は、暗く湿っていた。壁には苔が生え、足元の石畳は滑りやすかった。ラーンは先頭を歩き、剣を構えながら周囲を警戒した。イシェは後方を守り、テルヘルは二人に少し遅れて歩いていた。
「ここからは特に注意が必要だ。」テルヘルが静かに言った。「この迷宮跡には、かつて強力な魔物が生息していたという噂がある。」ラーンの表情が引き締まる。イシェも緊張した様子を見せた。
すると、通路の奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで獣の唸り声のようなものだった。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。「何かが近づいている…」ラーンの声が震えるように響いた。