ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をした時、イシェが小さくため息をついた。「またここか…」彼女の言葉にラーンは苦笑した。「 complaining again?」イシェは眉をひそめた。「いいえ、ただ…」。彼女は言葉を濁す。この遺跡は、かつてラーンたちが子供の頃よく遊んでいた場所だった。今は崩れかけている石造りの階段や苔むした壁面など、懐かしさを感じさせるものばかりだが、今は危険な遺跡探査の現場だ。
テルヘルが地図を広げ、「ここへ行くんだ」と指差す。ラーンの視線は、イシェと同じように、かつて二人で走り回った場所へと向かっていた。あの頃、二人は夢を語り合った。大人になったらどんな冒険をするのか、どんな宝物を見つけるのか。遺跡に眠る秘密を探検し、世界を旅する英雄になるのだ!
「準備はいいか?」テルヘルの声が現実に戻してくれた。イシェは小さく頷き、ラーンも剣を手に取った。三人は懐かしさと少しの不安を抱えながら、崩れゆく階段を登り始めた。
遺跡内部は暗く、湿った空気が漂っていた。かつての栄華は失われ、朽ち果てた石柱だけが、かつての壮麗さを物語っているようだった。ラーンは懐かしさに胸を締め付けられる思いがした。イシェも同様に、あの頃と変わらない景色に、複雑な感情を抱いていたようだ。
「ここだ」テルヘルが壁の一角を指さす。そこに奇妙な模様が刻まれていた。「この模様からして、かなり古い遺物がある可能性が高い」彼女は興奮気味に言った。
ラーンはイシェの顔色を伺った。彼女の瞳には、かつての輝きを取り戻しつつあるように見えた。あの頃のように、冒険心と好奇心が芽生えてきたようだ。
「よし、行こう!」ラーンの声は力強く、イシェも頷いた。三人は懐かしさと新たな希望を抱きながら、遺跡の奥へと進んでいった。