ビレーの酒場に響き渡る大歓声。ラーンが豪快に酒を煽り上げると、イシェは苦笑いを浮かべながら顔を覆った。
「またかよ、ラーン。あの騒ぎを起こすような話、一体どこから持ち出してくるんだ？」
「いや、今回はマジなんだぜ！あの遺跡の奥深くで、巨大な金塊を見つけたって噂が聞こえてきたんだよ！」
ラーンの目は輝き、興奮気味に話した。イシェはため息をつきながら、酒を一口飲んだ。
「そんな噂、いつも聞いているわよ。今回は本当にそうなのかしら？」
ラーンは自信満々に頷く。
「今回は違う！あのテルヘルが、僕たちを連れて行ってくれるって言うんだよ！」
イシェは眉をひそめた。テルヘルとはヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性で、彼らの遺跡探索に高額の日当と引き換えに協力していた。冷酷な性格で、目的のためには手段を選ばないタイプだ。
「テルヘルが連れて行ってくれるなら、何か裏があるんじゃないかと心配になるわ…」
ラーンの興奮を冷ますように、イシェは慎重に言った。しかし、ラーンはすでにテルヘルの話に乗せられ、目を輝かせていた。
「大丈夫だ、イシェ！今回は大穴が見つかる予感しかしないんだ！」
ビレーの酒場には、いつも通りの活気が戻った。ラーンの熱意は周りの者達も巻き込み、歓声と笑いが溢れ出す。イシェは彼らを見つめ、複雑な表情を浮かべた。
テルヘルとの懇意は、確かに彼女たちの生活に安定をもたらしていた。しかし、その裏には常に危険が潜んでいることを、イシェは肌で感じていた。
それでも、ラーンの夢を叶えたいという気持ちと、自分自身も何かを見つけるかもしれないという希望を胸に秘めながら、イシェはテルヘルの提案を受け入れる決意をした。