ラーンの大斧が遺跡の奥深くへと轟き渡った。石塵が舞い上がり、視界を奪う。イシェは咳払いをして、「また無駄な力を expenditure だわよ」と呟いた。ラーンは得意げに笑って、「いや、今回は違うぞ! 何か感じるんだよ、この場所から!」と胸を叩いた。だが、彼の目はどこか空虚だった。
テルヘルは冷静に周囲を観察していた。彼女の視線は、崩れた壁の隙間にある奇妙な模様に留まっている。それはヴォルダン兵士が刻んだものだと彼女は知っていた。あの日、彼女を全て奪った張本人たちの印だ。
「何か見つけたのか?」イシェの声がテルヘルを引き戻した。「いいえ、ただ考えているだけです」とテルヘルは答えた。しかし、彼女の心は怒りに燃えていた。あの日、ヴォルダン兵士たちが彼女の家を襲い、家族を殺し、全てを奪っていった。その光景は、今も鮮明に焼き付いていた。
ラーンの斧音が再び響き渡る。「何かあるぞ!」と彼は叫んだ。石塵が落ちると、そこには小さな金箱があった。イシェはため息をついた。「また大した物じゃないわね」と呟いた。だが、テルヘルの瞳は金箱をじっと見つめていた。その中に刻まれた紋章は、ヴォルダン王家のものだった。
「これは…」テルヘルは呟いた。彼女の胸に、激しい憤怒が渦巻いていた。「あの忌まわしい紋章…」と彼女は歯を食いしばった。この遺跡がヴォルダンと何か関係があるのかもしれない。そして、それが彼女への復讐の糸口になるかもしれない。
ラーンが金箱を開けると、そこには一枚の地図が入っていた。イシェは興味なさそうに「また古い地図か」と言ったが、テルヘルは地図を手に取り、興奮を抑えきれなかった。「これは…」彼女は地図を指さしながら言った。「ヴォルダン王家の秘宝の場所を示しているかもしれない」
ラーンの顔色が変わった。「もし本当なら、大穴だ!」と彼は目を輝かせた。イシェは眉をひそめたが、テルヘルは地図を握りしめ、憤怒に燃える瞳で言った。「ヴォルダンから全てを奪い返した者に、この地図の真実は明らかになるだろう」