灼熱の太陽が容赦なく大地を焼き付ける。ビレー郊外の遺跡に、ラーンが汗だくになって巨大な石扉を押しやっていた。「おい、イシェ、手伝ってくれよ!この扉、重いんだよ!」
イシェは背を向けながら、小さく呟いた。「いつも大げさなことを言うなぁ。少し手伝えばいいだけでしょう?」細身ながら素早い動きでラーンに近づき、肩に力を込める。石の扉はゆっくりと開いていく。埃っぽい空気が充満し、薄暗い遺跡内部が見えた。
「よし、入ろう!」ラーンが先陣を切って遺跡の中に入っていく。イシェは後ろから彼を見つめながら、ため息をついた。「いつも通り、計画もなしに…」
遺跡の奥深くに進むにつれて、空気が重くなり、不気味な静寂に包まれた。壁には奇妙な模様が刻まれており、かすかに冷たい風が吹き抜ける。ラーンは目を輝かせながら、「ほら、イシェ!何か面白いものが見つかったぞ!」と叫んだ。
床に置かれた小さな石棺を指差す。イシェは慎重に近づき、棺の蓋を開けた。中からは、錆びついた剣と、小さな水晶の瓶が置かれていた。ラーンは興奮気味に剣を取り上げた。「おお!これはいいものだぞ!」
「待て、ラーン。」テルヘルが低い声で言った。彼女は遺跡の奥からゆっくりと現れ、ラーンの動きを制止した。「あの剣には何か呪いがかけられているかもしれない。触らない方がいい。」
ラーンの顔色が変わった。「呪い?そんな…」彼は剣を放り投げた。イシェは水晶の瓶を手に取り、中をのぞき込んだ。「何が入っているんだろう?」
テルヘルは瓶を奪い取った。「これは危険だ。触るな。」彼女は瓶をポケットにしまい、「この遺跡には何か邪悪な力がある。ここは早く出るべきだ。」と告げた。
ラーンの顔色はさらに青ざめた。「おい、待てよ!まだ何も見てないじゃないか!もっと探したいんだ!」
テルヘルは冷たい目で彼を見つめた。「なぜお前たちはここに来たのか?大穴を求めているのか?それとも…」彼女は言葉を濁し、視線を逸らす。「とにかく、この遺跡にはもう何もない。出て行こう。」
イシェはラーンの肩を叩いた。「そうだな、今回はこれで終わりにしよう。また別の機会があるはずだ。」ラーンは渋々ながら従い、3人は遺跡を出た。
日暮れのビレーの街並みを見ながら、イシェはラーンに言った。「あの剣と瓶は何だったんだろう?」
ラーンは肩をすくめた。「知らん。でも、テルヘルがそんな真剣な顔をしていたということは、何か恐ろしいものだったのかもな。」
イシェは静かに頷きながら、テルヘルの表情を思い出した。彼女の目は、深い憎悪で満たされていたようだった。そして、それはただの復讐心ではなく、何かもっと大きな何かを感じさせた。
「あの剣と瓶には、きっと何か秘密が隠されているはずだ。」イシェはそう呟き、ラーンの視線に自分の決意を伝えた。