ビレーの夕暮れ時、ラーンが酒場の大テーブルを叩きながら豪語していた。
「今度こそだ！あの遺跡の奥深くに、金銀財宝が眠ってるって噂があるんだ！」
イシェはため息をついた。「またか…」と呟きながら、目の前の空になった酒樽を注ぎ直した。ラーンの熱意に巻き込まれると、いつも以上に疲弊してしまう気がした。
「でも、あの遺跡は危険だぞ、ラーン」とイシェは冷静に指摘する。「以前も言ったように、あの地域にはヴォルダンの兵士が出没するって噂があるんだ。」
ラーンはイシェの言葉を無視して、テルヘルの方へ視線を向けると、「どうだ、テルヘル！一緒に探検しないか？大穴を見つけるチャンスだぞ！」と目を輝かせた。
テルヘルは薄暗い酒場の照明に照らされ、鋭い眼光を向けていた。「情報によれば、あの遺跡にはヴォルダンが追跡する何かがあるらしい。我々にとって貴重な情報源になるかもしれない」と、冷静に答えた。彼女の言葉は常に目的意識的で、ラーンの熱意とは対照的だった。
イシェは不安な気持ちを抱えながらも、テルヘルの言葉に少しだけ安心した。テルヘルが同行すれば、危険な状況でも冷静に対処できるだろう。しかし、ヴォルダンとの関連を知ったことで、イシェは更に複雑な思いを抱くようになった。
ビレーには古くからある慣習がある。それは、遺跡探索に出る際には必ず酒場で杯を交わし、互いの安全を祈ることだった。ラーンは慣習に従い、杯を掲げた。「よし！皆で力を合わせて、大穴を見つけ出してやろうぜ！」と、豪快に笑った。イシェもラーンの笑顔に少しだけ励まされ、杯を掲げ直した。
しかし、イシェの心の中では、不安な予感が拭えなかった。ヴォルダンが影を落とすこの世界で、彼ら3人は本当に大穴を見つけることができるのか？そして、その先に何が待ち受けているのか…