ビレーの酒場「荒くれ者の安息처」は、いつも大勢の人で賑わっていた。ラーンとイシェは、いつもより少し早く席に着き、テルヘルが到着するのを待っていた。
「遅っつうの!」ラーンの不機嫌そうな顔に、イシェは小さくため息をついた。「落ち着きなさいよ。彼女はいつも通りだ」
その瞬間、扉が開いてテルヘルが入ってきた。黒いフードを深くかぶる姿は、いつも通りの威圧感があった。
「準備はいいかい?」テルヘルは、テーブルに置かれた地図を広げると、いつものように淡々とした声で言った。「今回は少し危険な遺跡だ。慣例通り、報酬は増やす」
ラーンは目を輝かせた。「やった!大穴が見つかるかもな!」イシェは眉をひそめた。「危険な遺跡…具体的にどんな場所なのか説明してくれないと…」
テルヘルは、イシェの言葉を無視するかのように地図を指さした。「ここはかつてヴォルダンの魔術師が研究していた場所だ。強力な遺物が眠っていると噂されている」ラーンの顔には興奮の色が浮かんだが、イシェは不安そうな表情を崩すことはなかった。
「慣例通り、危険を承知で契約する」イシェは、深呼吸をしてから言った。「ただ、今回は何か…変を感じているんだ」テルヘルは、少しだけ眉間にしわを寄せたが、何も言わずに頷いた。
次の瞬間、ラーンの豪快な笑い声が酒場に響き渡った。「よし!準備はいいぞイシェ!大穴が見つかる予感しかしない!」 イシェは、ラーンの背中に手を置こうとしたが、彼はもう席を立っていた。テルヘルも立ち上がり、イシェに視線を合わせた。「慣例に従って、彼を止めなさい」と囁き、静かに酒場から出ていった。
イシェは、深い溜め息をついた。いつも通りの光景なのに、なぜか今日は少し違う気がした。