ラーンの粗雑な剣振りが埃を巻き上げ、イシェの鼻を突いた。「おい、気をつけろよ！」イシェが顔をしかめながら抗議するも、ラーンは気にせず遺跡の奥へ進んでいった。彼らはテルヘルに雇われて、ヴォルダンとの国境付近にある遺跡を探検していた。
「ここには何かあるはずだ」とテルヘルは地図を広げながら言った。「この記号…これは古代の保護符だ。強力な力を持つ遺物が眠っている可能性が高い」。イシェはテルヘルの言葉に少しだけ期待を感じたが、ラーンの無鉄砲さにいつも冷静さを保つことに苦労していた。
遺跡内部は狭く、湿った冷たい空気が流れ込んでいた。壁には古びた彫刻が刻まれ、その様子からはかつて栄えた文明の痕跡を感じさせた。ラーンは興奮気味に壁を叩き、「何かあるんじゃないか？」と叫んだ。イシェは彼を制止しようとしたが、その時、床が崩れ落ち、ラーンは深い穴に落ちてしまった。
「ラーン！」イシェが悲鳴を上げると同時に、テルヘルも駆け寄ってきた。「大丈夫か！？」イシェが必死に穴を見下ろすと、ラーンの姿が見えた。彼は少し怪我をしていたようだが、意識はあった。「大丈夫だ…！」と声が聞こえた。
テルヘルは冷静に状況を判断し、近くの石板を持ち上げて穴の縁に固定し、ラーンを上に引き上げ始めた。イシェも協力し、なんとかラーンを助け出した。
「お前は本当に…」イシェが怒り気味に言ったが、ラーンの顔には申し訳なさが見えなかった。「いや、あの彫刻…！」ラーンは床に落ちた彫刻の破片を指さした。そこには奇妙な模様が刻まれており、まるで愛護を表現しているかのようだった。
「これは…」テルヘルが目を丸くして彫刻を見つめた。「保護符…まさか、この遺跡は…」その瞬間、遺跡の奥から強い光が放たれ、三人は目を細めた。
光の中に浮かび上がるものは、古代文明の守護神の姿だった。そして、その神は優しい眼差しで三人に微笑みかけた。