ビレーの喧騒を背に、ラーンは大きな荷物を担いで険しい山道を登り始めた。イシェが後ろから小さくため息をつくのが聞こえる。「今日は本当に必要なのかね、この遺跡探検？」
「もちろんだ！ほら、テルヘルさんが言ってたろ？あの遺跡には古代の宝庫があるって！」ラーンの目は輝いていた。彼はいつもそうだった。危険な遺跡探検を「愛好」する彼の心は、いつだって冒険に満ちていた。イシェはそんな彼を少し呆れながらも、どこか安心していた。
日が暮れ始めると、彼らは小さな洞窟に到着した。テルヘルが事前に調査した地図を広げ、「ここだ。ここから先は特に危険らしい。気をつけろ」と警告する。ラーンは剣を構え、イシェは細長いロープを手に取る。洞窟の奥には、薄暗い光が淡く漏れているのが見えた。
「よし、行くぞ！」ラーンの声が響き渡ると、彼らはゆっくりと洞窟の中へと足を踏み入れた。
湿った空気と土の臭いが漂い、足元には滑りやすい石が転がっている。進むにつれて空気が重くなり、不気味な静けさが彼らを包み込む。「何かいる気配を感じる…」イシェが小声で呟く。ラーンは剣を握りしめ、周囲を見回した。
その時だった。洞窟の奥から、低い唸りが聞こえてきた。その音色は、まるで巨大な獣の咆哮のようだった。ラーンの顔色が変わり、「これはまずいぞ！逃げよう！」と叫んだ。しかし、その時、巨大な影が彼らを襲ってきた。
激しい光と音が爆発し、ラーンは意識を失った。目を覚ますと、彼はイシェと一緒に洞窟の入り口付近で倒れていた。テルヘルが近くに立っていて、血にまみれた剣を片手に、「無事だったか？」と尋ねる。
「あの…一体何だったんだ？」イシェが震える声で言った。テルヘルは小さく頷き、「古代の守護者だ。強力な魔物だが、今は眠りについたようだ」と答えた。ラーンは立ち上がり、傷を撫でながら言った。「よし、これで宝庫が見つかるぞ！」
イシェは呆れたような表情で彼を見つめた。ラーンの「愛好」は、時に危険な冒険に彼を引きずり込む。しかし、イシェはいつしかラーンのその熱意に惹かれ始めていたのかもしれない。