ラーンの粗雑な剣振りが埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと洞窟を照らす炎が揺らめいた。イシェは眉間に皺を寄せ、地図を広げた。「ここなら、あの碑文に記された場所だ。慎重に進もう。」
「分かってるよ、イシェ。いつもビビりすぎだろ」ラーンは苦笑しながらも、剣を構え直した。テルヘルが彼らを雇った目的は、この遺跡の奥深くに眠るとされる古代の遺物、「月の涙」。その輝きはどんな宝石よりも価値があると噂されていた。
「ここには罠がある可能性が高い。油断するな」テルヘルは鋭い眼差しで周囲を警戒した。彼女はヴォルダンからの復讐を誓っており、そのために月の涙が必要だった。それは単なる宝石ではない。彼女の復讐の鍵となる強力な魔力の源泉だった。
イシェは壁に刻まれた古びた文字を指さし、「ここには警告が記されている。この遺跡を守る存在がいると…」彼の言葉は途中で途絶えた。洞窟の奥から、不気味な音が響き渡った。それはまるで、誰かの悲鳴のようだった。
ラーンは剣を抜き、テルヘルも daggersを握り締めた。イシェは地図を閉じ、恐怖を隠すように深呼吸をした。すると、影が壁に揺らめき、巨大な怪物が現れた。その姿は、獣と人間の hybridsのようで、鋭い牙と爪を持ち、赤い目が燃えるように光っていた。
「これは…！」イシェは言葉を失った。ラーンは立ち向かう準備をするが、テルヘルは彼を制止した。「待て。あの怪物はただの守護者ではない。この遺跡を守っている存在だ。我々の目的を邪魔する存在だ」
彼女の目には冷酷な光が宿っていた。そして、彼女は振り返り、ラーンの目をじっと見つめた。「お前たちは私に従う必要がある。生き延びるためには」
その瞬間、ラーンはテルヘルの言葉に隠された意味を感じた。それは復讐のためだけでなく、何か別の目的があるように思えた。そして、彼の心には、彼女が抱える深い闇と、その中に眠っている「愛人」のような存在への執着を垣間見た気がした。