「おい、イシェ、あの石柱は何だ?」ラーンが指さす先には、苔むした石柱がそびえ立っていた。イシェは慎重に近づき、柱に刻まれた文字を確かめた。「古代ヴォルダン語らしい。何かの警告文かもしれない」
ラーンの眉間にしわを寄せた。「警告文か…こんなところに警告文があるってことは…」
「何か危険な罠がある可能性が高いってことね」イシェはそう言ってラーンに注意深く言った。「無理に進むのはやめましょう。」
だが、ラーンの目はすでに輝いていた。「危険といえば危険ほどワクワクするんだ!」と彼は言い残し、石柱をよそに進んでいった。
イシェはため息をつきながらラーンの後を追った。テルヘルは冷静な表情で、二人の様子を静かに見守っていた。「彼らにはまだ理解できないことがある」彼女は呟いた。「真の危険とは何か…」。
遺跡の奥深くへと続く通路。そこには、古代の呪文が刻まれた石板が置かれていた。ラーンが興味津々に石板に手を伸ばそうとしたその時、イシェは素早く彼の腕を掴んだ。「待ちなさい!」
「なんだ、イシェ?怖いか?」ラーンの挑発的な言葉に、イシェは少しだけ動揺した。しかし、彼女は冷静さを保った。「これは単なる石板じゃない。触れると呪いが発動する可能性がある」
ラーンの顔色が少し変わった。「呪い…そんなわけないだろう?」彼はそう言ったものの、どこか不安げな表情を浮かべていた。
テルヘルは沈黙を守り、二人のやり取りを見つめていた。彼女の目は、石板に注がれるラーンの視線から、イシェの冷静な判断まで、すべてを見透かしていた。そして、彼女は静かに思った。「彼らが共に歩む道は、決して平坦ではないだろう」。
ラーンはイシェの言葉を無視して石板に触れようとしたその時、突然石板から光が放たれた。その光がラーンの体を包み込み、彼は苦しみながら床に倒れ込んだ。
「ラーン!」イシェが駆け寄ると、ラーンの体は激しく震え、意識を失っていた。テルヘルは冷静に状況を判断し、石板に刻まれた呪文を読み解き始めた。
「これは…意思疎通を阻害する呪いだ」テルヘルは呟いた。「ラーンは、しばらくの間、自分の言葉で話すことができなくなるだろう」。