ビレーの酒場で、ラーンが豪快な笑い声を上げている。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の隣に座って酒を一口飲む。ラーンの目の前には、テルヘルが冷えた視線を送っている。
「また大穴が見つかったとでも言いたいのか?」テルヘルの声は冷たく、鋭い。ラーンは少しだけ縮こまった。
「いや、そんな…今日はいいもの見つけたんだ。」ラーンはテーブルの上に小さな石を置いた。「古代の技術でできたらしい。価値があるんじゃないか?」
イシェが石を手に取り、目を細める。「確かに珍しいものだけど…大穴と比較するのは難しいね。」
テルヘルは石を見下ろしながら、「時間の問題だ。いつかはあの大穴も見つかるだろう。」と呟いた。その視線はラーンの顔から、イシェの顔へと移った。イシェは一瞬、テルヘルの視線に言葉を失いそうになる。だが、すぐに冷静さを取り戻し、石をテーブルに戻した。
「大穴の話はいいでしょう。今日の成果について話すべきだ。」イシェは硬い声で言った。「遺跡から持ち帰った遺物には価値があるようだ。調査の結果が楽しみだ。」
ラーンの顔色が曇る。「そうだな…でも、あの遺物…何か変だと思うんだ。」
「変?」テルヘルが眉をひそめた。「具体的に説明しろ。」
ラーンはためらった後、小さく呟いた。「あの…あの遺物に刻まれた模様…どこかで見たような気がするんだ。」
イシェはラーンの視線に従って遺物を見つめる。確かに、複雑な模様はどこかで見たことがあるような気がした。しかし、すぐに否定した。「そんなことはありえない。あの遺跡は未開拓の場所だ。」
「でも…」ラーンの言葉が途絶える前に、 tavernのドアが開いた。背の高い男が、店の中をゆっくりと見回す。その男は、まるで影のように暗く、そしてどこか不気味な雰囲気を漂わせていた。彼はテーブルに近づき、テルヘルに視線を向けた。
「お待たせしました。」男は低い声で言った。「準備は整いました。」
テルヘルは男の目を見つめ返すと、小さく頷いた。その後、三人は立ち上がり、店を後にした。ラーンとイシェは、後ろ髪を引かれる思いで、男の姿を見送った。