ラーンの粗雑な剣 swing によって埃が舞う。イシェは鼻をつまみながら、「また無駄な動きか」とため息をついた。彼らは、ビレーから少し離れた遺跡の入り口で立ち尽くしていた。
「おいおい、イシェよ。もっと楽観的に考えろよ。もしかしたら今回は大穴があるかもな!」ラーンは、いつも通りの陽気さで言った。しかし、イシェの視線は遺跡の奥深くへと向けられていた。そこには、深い影が静かに広がっていた。
「何か感じる?」テルヘルが尋ねた。彼女は、鋭い視線で遺跡を吟味しながら、二者のやり取りを見ていた。ラーンの無邪気な笑顔とイシェの眉間に浮かぶ皺。彼らの表情はまるで、この遺跡の持つ重みに対する相反する反応を表しているようだった。
「何かがおかしい」イシェは呟いた。「いつもとは違う。何か…不吉なものを感じるのだ」
テルヘルは頷いた。「私も感じる。ここには何か隠されているものがある。そしてそれは、私たちに喜びをもたらすものではないだろう」
ラーンは彼らの言葉を聞き流しながら、興奮を抑えきれない様子で遺跡の入り口へと歩み寄った。「そんなこと言わずに、早く中に入ろうぜ!」と彼は叫んだ。彼の背中に、影が伸びていく。それはまるで彼を飲み込むように、深く暗い闇が広がっていくようだった。
イシェはラーンの後ろ姿を見ながら、静かに呟いた。「ラーン…。」彼女の瞳には、深い悲しみが宿っていた。それは、彼がまだ知らない真実への予感であり、彼を待ち受ける運命への哀愁だった。