「おいラーン、あの石碑には何か刻まれてるぞ?」イシェが指さす方向を見ると、崩れかけた壁に奇妙な模様が彫り込まれていた。ラーンは眉間に皺を寄せながら近づき、石碑に触れた瞬間、背筋が凍りつくような寒気が襲ってきた。「うわっ、何だこれは…」ラーンの声は震えていた。イシェも不気味な空気を察し、本能的に後ずさった。「ここには何かいる気がする…」。テルヘルが呟くと、壁に彫られた模様が一瞬にして赤く光り始めた。
「逃げろ!」テルヘルの叫びと共に、石碑から黒い煙が噴き出し、部屋中に広がっていった。煙の中に不気味な影が浮かび上がり、鋭い牙を剥き出した。それは悪魔のような姿をした怪物だった。「おい、何だこれは!?」ラーンは剣を抜いて構えたが、その怪物は悪魔の力を宿したように、圧倒的な強さでラーンを押しつぶす。イシェは冷静に状況を判断し、テルヘルと共に避難路を探す。しかし、出口は魔物の黒い煙で塞がれ、逃げる術はない。「やめて!この力は…」テルヘルは必死に抵抗するが、怪物は容赦なく彼女に迫ってきた。その時、ラーンが立ち上がった。「イシェ、逃げろ!俺が時間を稼ぐ!」ラーンの剣は悪魔の力を宿した怪物に届かず、ただ弾き飛ばされる。「ラーン!」イシェが叫び声を上げる。
ラーンの背後から黒い煙が噴き出すと同時に、巨大な影が迫ってきた。イシェは絶望的な状況の中で、過去の記憶を思い浮かべた。ラーンと一緒に過ごした日々、彼の無邪気さと優しさ。そして、テルヘルとの出会いで生まれた希望。イシェは決意を固めると、力を振り絞って叫んだ。「ラーン!諦めるな!」その瞬間、イシェの体から光が放たれ、悪魔を包み込んだ。
光と影が激しく交錯し、激しい戦いが繰り広げられる中、イシェは自分の力が何なのか、そしてなぜそれが発動したのか分からなかった。しかし、ラーンを守るために戦うという強い意志だけが彼女を突き動かしていた。