「おい、イシェ、あの石像、触っちゃダメだって言ってたよな?」ラーンの脳裏ではすでに金貨の雨だった。イシェが警告する声も届かない。巨大な遺跡の中央には、崩れかけた石柱に支えられた、奇妙な形をした石像があった。その表面には複雑な模様が刻まれており、触ると危険な予感がした。
「待て!ラーン!」イシェは叫んだが、ラーンはすでに石像に触れていた。その瞬間、石像の目は赤く光り、周囲の壁から鋭い棘が生え始めた。ラーンの足元には、床が崩れ落ち、深い穴が開いた。「ラーン!」イシェの叫び声も、穴に飲み込まれたラーンの姿と共に消えていった。
「やられたな…」テルヘルは冷静に状況を判断した。彼女は事前に調査した資料には、この遺跡には危険な罠があることを知っていた。だが、ラーンの行動を止めようとすることはなかった。むしろ、彼の無謀さが彼女にとって都合が良いのだ。「いいか、イシェ。あの石像に触れた男の運命を知りたいなら、一緒に探索するんだ」テルヘルは冷たい瞳でイシェを見つめた。「そして、彼のような愚かな男が犯した過ちから教訓を得るんだ」。イシェは彼女の言葉の意味を理解し、恐怖と怒りに震えるのを感じた。
深淵に落ちたラーンは、石畳の上で意識を失っていた。彼の目の前には、巨大な影が迫り来る。それは、石像の守護者だった。その目は赤く燃え盛る炎のように輝き、鋭い牙を剥き出しにしていた。ラーンの体は痛みに震えていたが、彼は立ち上がることを諦めなかった。「イシェ…」彼の心の中で、仲間の声がこだました。
一方、テルヘルとイシェは遺跡の奥深くへと進んでいた。遺跡の壁には、古代文明の残骸が散らばっていた。そこには、驚くべき技術力と、それを利用した悪辣な目的が感じられた。テルヘルは、ラーンの運命を軽視する一方で、この遺跡に隠された真実を解き明かすことに執念を燃やしていた。彼女は、ヴォルダンとの復讐を果たすために、あらゆる手段を厭わないのだ。