ラーンの大斧が石の扉を粉砕した。埃が立ち込め、視界を奪う中、イシェが咳き込みながら「またあの安っぽい仕掛けか」と呟いた。
「よしっ、これで財宝だ！」
ラーンは興奮気味に扉の向こうへ飛び込んだが、その先に広がったのは薄暗い空洞だった。イシェはため息をつき、テルヘルに視線を向けた。「いつも通りの様子ですね」
テルヘルは冷静な表情で洞窟の壁を指さした。「壁画だ、見ろ」
壁には奇妙な模様が刻まれていた。幾何学的な図形と、それらを繋ぐように描かれた不規則な線。イシェが近づき、指先で線をなぞった瞬間、冷たい風が吹き付け、洞窟に不気味な響きがこだました。
「何か変だ」
ラーンの顔色が変わった。「イシェ、何か感じるか？」
イシェはうなずいた。「悪寒がする…まるで何かが僕たちを見ているような気がする」
その時、壁画から赤い光が放たれ、洞窟全体を赤く染めた。その光はゆっくりと動き、やがて三人に近づいてくるにつれて、奇妙な形を成し始めた。それは、幾何学的な図形が組み合わさった巨大な目のようなものだった。
「これは…」
テルヘルは言葉を失い、ラーンとイシェも恐怖で固まった。その目はゆっくりとまばたき、三人をじっと見つめた。そして、低い声が洞窟中に響き渡った。
「汝らは…悪神の眠りを覚ます者か」