「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」ラーンが地図を広げ、太い指で地点を指差した。イシェは眉間にしわを寄せた。「また危険な場所? 以前のあの洞窟みたいに、collapseしてたら困るぞ」
「大丈夫だ、大丈夫。俺が先頭行くから」ラーンは豪快に笑った。イシェはため息をつきながら、準備を始めた。テルヘルは二人のやり取りを冷ややかに見つめていた。「この遺跡には何かがある。ヴォルダンが執拗に探している理由が分かるはずだ」
ビレーの街には、最近不穏な空気が流れていると感じていた。議会での議論は激化し、街の人々の顔にも影が差していた。自主独立派と恭順派の対立は日に日に深まり、いつ爆発するか分からない緊張感が漂っていた。
「おい、イシェ。お前ら、ヴォルダンとの関係をどう思う?」ラーンの突然の問いかけにイシェは驚いた。「そんなこと、急に…」
「いや、あの大国がビレーを脅かすのは間違いないだろ? このままじゃ、いずれ戦争になるんじゃないか?」ラーンの言葉は重かった。イシェは深く頷き、「そうかもな…でも、俺にはどうすることもできない」と呟いた。テルヘルは静かに口を開く。「私はヴォルダンに全てを奪われた。復讐を果たすためにも、この遺跡の秘密を知り、ヴォルダンを倒さなければならない」
崩れかけた塔の奥深く、彼らは謎の装置を発見した。複雑な模様が刻まれた石板と、脈打つような光を放つ水晶。その光景は、どこか不気味な美しさを持っていた。「これは…」イシェが呟くと、突然塔が激しく揺れた。天井から瓦礫が崩れ落ち、ラーンはイシェを庇いながら転倒した。
「気をつけろ!」テルヘルが叫びながら剣を抜き、襲いかかってきた影を斬り伏せた。それは、ヴォルダンの兵士だった。「何しに来た? この遺跡は…」ラーンの問いには、兵士はただ冷酷に笑うだけだった。「この遺跡は我々のものだ。お前たちは邪魔者だ」
激しい戦いが始まった。ラーンとイシェは剣を振り回し、テルヘルは巧みな動きで敵を翻弄した。しかし、ヴォルダンの兵士たちは多く、次第に追い詰められていく。イシェが深手を負い、立ち上がれなくなった。「やめてくれ…」
その時、装置から強烈な光が放たれた。塔全体が揺れ、兵士たちはよろめき倒れた。光は収まると、装置の中心には美しい宝石が輝いていた。「これは…」テルヘルが宝石を手に取ると、その瞬間、彼女の表情に激しい怒りが浮かんだ。「ヴォルダン…この宝石を使って、お前たちの国は繁栄すると思ったのか? この悪政を許すわけにはいかない!」
ラーンとイシェはテルヘルの言葉の意味を理解した。遺跡の秘密は、ヴォルダンの野望を支える鍵だったのだ。そして、その野望が、ビレーの人々を苦しめる悪政を生み出していた。彼らは、この宝石を守るために、ヴォルダンに立ち向かう決意をした。