「おい、イシェ、準備いいか?今日はいい感じの場所らしいぞ!」ラーンの声はいつも通り弾んでいた。イシェは視線を遺跡の入り口からそらさずに言った。「準備はいいけど、またお前が言ういい感じの場所ってのは一体…」
「ほら、ほら、今回は違うって!テルヘルも珍しく大金出すって言うんだろ?それくらい期待できるはずだ!」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。確かにテルヘルはいつもより高額の日当を提示してきたが、その理由は不明だった。
遺跡の入り口には、いつも通り、テルヘルが待っていた。「遅っな。準備はできたか?」と冷めた声で尋ねるテルヘルにラーンはニヤリと笑った。「もちろん、準備万端だぜ!」イシェはテルヘルの鋭い視線を感じながら、静かに頷いた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。足元の石畳には苔が生えており、滑りやすい。ラーンが先頭を切り、イシェとテルヘルが続く形で慎重に進む。
「何かあったらすぐに知らせてくれ」テルヘルの言葉は氷のように冷たかった。イシェは小さく頷くだけだった。ラーンの無茶な行動にいつもハラハラするが、彼の明るさはイシェにも少しの勇気を与えてくれる。
奥へと進むにつれて遺跡の空気が重くなってきた。壁には不気味な模様が刻まれており、イシェには悪寒が走った。「ここは…何か違う気がする…」イシェは小さな声で呟いた。
ラーンは気にせず、遺跡の中央にある大きな石棺に向かって歩みを進めた。「よし、ここだ!きっと何か宝物が眠っているはずだ!」と叫びながら石棺に手を伸ばすラーン。だが、その瞬間、石棺から黒い煙が噴き出し、ラーンを包み込んだ。
「ラーン!」イシェが驚いて叫ぶと、煙の中からラーンの悪態をついた声が聞こえた。「くそっ…何だこれは!?」煙はすぐに消え、ラーンの姿が現れた。だが、彼の顔色は悪く、額には冷たい汗が滲んでいた。
「どうしたんだ、ラーン?何かあったのか?」イシェが駆け寄ると、ラーンは苦しそうに言った。「あの石棺…なんか変だな。触った瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた…」
テルヘルは冷静な表情で状況を分析し始めた。「何か呪いのようなものなのかもしれない。注意が必要だ」
イシェはラーンの様子を見て不安になった。彼の無茶な行動が招いた結果なのかもしれない。そして、この遺跡には何か恐ろしい秘密が隠されていると感じた。