「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!噂によると、奥に秘宝が眠っているってな!」ラーンが目を輝かせ、イシェの肩を叩いた。イシェはため息をつきながら地図を広げた。「またそんな話かい? ラーン。遺跡探索は危険なものだと、何度も言ってるだろう」
「大丈夫だ、イシェ!俺たちにはテルヘルさんがいるんだろ?」ラーンがそう言うと、テルヘルは薄暗い表情で頷いた。「準備はいいか?」
崩れかけた塔に続く道は険しく、落とし穴もいくつかあった。ラーンとイシェは協力して進み、テルヘルは後方から鋭い視線を送っていた。
塔の中は暗く湿り、埃が舞う。壁には奇妙な文字が刻まれており、不気味な雰囲気が漂っていた。
「ここからは俺たちが先導する」テルヘルが言った。「この遺跡には何か秘密があるはずだ」
彼らは深い地下へと続く階段を降りていった。階段の途中、イシェは足元に落ちている小さな箱を見つけた。「これって…?」
箱を開けると、そこには宝石がぎっしりと詰められていた。イシェは目を丸くした。「なんてこった…」
「見つけた!大穴だ!」ラーンが叫んだ。しかし、その瞬間、後ろからテルヘルが彼を押し倒した。ラーンの目の前で、イシェもテルヘルに捕らえられた。
「何をするんだ、テルヘル!」ラーンの怒号が響き渡った。
テルヘルは冷たい笑みを浮かべた。「君たちにはもう用はない」彼女は宝石を手に取り、言った。「この遺跡の真の目的は、この宝石をヴォルダンに捧げることだ。君たちを利用して手に入れたのだ」
ラーンとイシェは絶望した。彼らは騙され、利用されていたのだ。テルヘルの目的は、単なる復讐ではなかった。ヴォルダンとの裏取引、そして悪徳な野心。彼らの夢と希望は、まるで埃のように崩れ去った。