ビレーの薄暗い酒場「荒くれ者」で、ラーンは空気を呑むように酒を流し込んだ。イシェは眉間にしわを寄せながら、テルヘルの話に耳を傾けていた。
「ヴォルダンは、遺跡から発掘された古代兵器を復活させようとしている。その力を利用して、周辺国を征服するつもりだ」
テルヘルは冷酷な表情で言った。彼女の言葉は重く、ラーンの心にも悪寒が走った。酒の味が口の中で苦く感じた。イシェは冷静に反論した。
「証拠があるのか?ヴォルダンは強大だとしても、そんな野望を実現できるはずがない」
「証拠は必要ない。私の復讐には、その程度で十分だ」
テルヘルは鋭い視線でラーンをじっと見つめた。「お前たちは、この国の未来を決める力を得るチャンスを持っている。ヴォルダンに立ち向かうのだ」
ラーンの心は揺れた。彼はいつも無邪気に遺跡を探していたが、今、目の前に広がるのは壮大な陰謀だった。イシェの冷静な判断を無視してでも、テルヘルの言葉を信じてみるべきだろうか?悪寒が背筋を這い上がるように感じた。
ラーンの視線は、酒場の外へと向けられた。夕暮れの空には、ヴォルダンとエンノル連合の国境を隔てる山脈が暗く聳えていた。その向こう側では、どのような陰謀が渦巻いているのだろうか?彼らの人生は、この遺跡探しの先にあるのか?
ラーンは深く息を吸い込んだ。そして決意を固めたように、テーブルに置かれた剣を握りしめた。