「よし、ここだな!」
ラーンの声がビレーの遺跡の入り口に反響した。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の指差す方向を見つめた。そこには崩れかけた石柱と、まるで獣の爪痕のような深い溝があった。
「また、そんな危険な場所に入っていくつもり?」
イシェの言葉にラーンは豪快に笑った。「大丈夫だ、イシェ。今回は大穴が見つかる予感がするんだ!」
彼は剣を構え、遺跡へと足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。
「どうするつもりですか?」
テルヘルは静かに頷き、後を追った。彼女の目は鋭く、周囲を警戒するように動いていた。
遺跡内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。壁には奇妙な文様が刻まれ、床には腐敗した木製の家具が散らばっていた。ラーンは興奮気味に石柱を叩き、
「ほら、何かあるぞ!」と叫んだ。
しかし、イシェは彼の様子を冷静に見ていた。
「ラーン、落ち着いて。何か変だ」
その時、床から黒い煙が立ち上り始めた。煙の隙間から、赤く光る目が覗き込んだ。
「何だ?!"
ラーンの叫び声と共に、巨大な影が彼らを襲いかかってきた。それは獣のような姿をした怪物だった。鋭い牙と爪を持ち、体に鎖を巻きつけたように不気味な金属の部品が付着していた。
「悪党め!」
テルヘルは剣を抜いて、怪物に立ち向かった。彼女の動きは素早く、正確だ。しかし、怪物は強靭で、彼女の攻撃をことごとくかわす。
ラーンも剣を構えたが、その姿は怯えていた。イシェは冷静さを保ち、怪物とラーンの間に入り、弓矢を構えた。
「ラーン、逃げろ!」
イシェの矢は怪物に命中するが、わずかな傷跡を残す程度だった。怪物は怒り狂い、イシェに向かって襲いかかってきた。
その時、テルヘルが怪物に一撃を食らわせた。怪物はよろめき、その隙にイシェはラーンの手を引っ張り、遺跡の外へと走った。
「逃げろ!」
Behind them, a chilling laughter echoed through the ruins.